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「ご明察で。」


「亮ちゃんの職場近いから、俺もたまに会う。」


大倉くんは缶ビールを持ちながらも器用に煙草を箱から出すと、咥えて火をつけた。大倉くんは結構ヘビースモーカーだ。

ビールはよく冷えていたから、秋の夜にはすこしつめたい。私はカーディガンの袖を引っ張った。

夏に聞いたのとはまた違う虫の声がする。




「亮ちゃん、そういうめんどくさいとこあるよな。」


今日の昼のこと、亮がわかりやすく大倉くんに嫉妬をしていた話をすると大倉くんは眉を寄せて笑った。


「けど、そういうことが好きなんやろ?亮ちゃんのそういう幼稚なとこ。」


ずっと思ってはいたけれど、大倉くんの洞察力はすごい。頭の中を透視されてるんではないかと疑ってしまうくらい、私が考えてることを見抜かれてしまう。

私は返事をする代わりに、笑いながらため息をつく。


「…亮のことどうやったら嫌いになれるかな。」


問答無用であることを承知の上で、独り言みたいに呟いた。


きっと私は亮が私のことを好きにならなくても、人を傷つけてしまっても、何か過ちを犯してしまったとしても、それでも好きなんだと思う。

それくらいに、私の心は中は自然に亮を想う気持ちで満ちている。それは年月をかけて、静かに満ちてきたものだった。


「嫌いになんのは難しいけど、忘れるんならもうちょい簡単やで。」


「どうやって?」


あまり当てにはしていないけど、首を傾げ大倉くんを見上げると、大倉くんはわざとらしく得意げな顔をして見せる。


「決まってるやん。他の男んこと好きになればええねん。」


「…それが難しいんでしょ。」


「ようさん失敗してきとるもんな。」


「うるさいな。」


んふっといやらしい笑みを浮かべる大倉くんを睨んだ。


「けどわからへんで。環境が変わればそういうこともあるかもしらん。

どっちにしろ、もしうちの会社来たら亮ちゃんと顔合わすことも多くなるかもしれへんのやから、いちいち落ち込んでもいられへんやん?」


宥めるような口調でもっともなことを言われて私は「それは、確かに。」と言いくるめられた子供のように頷くしかない。


缶にすこし残っていたビールを飲み干すと、静かな空を見上げた。大倉くんはゆっくりと煙草をふかしていた。








「ゆるやかに動きだす」→←*



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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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