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「彼氏はなんか言うてんのん?」
亮にそう訊かれて、彼と別れたことを言っていなかったことに気づいた。
「ああ…彼とはすこし前に別れたよ。」
「え?」
「仕事もそんなんで忙しくて会う時間も減っちゃったから。」
「…すこし前っていつの話?」
亮は肘をついて、眉毛をひくりと動かした。なんとなく不機嫌そうだ。
「夏だったかな。まだ暑かった気がする。」
正直いつ彼と別れたのかというよりはその日の夜にボーリングに連れていかれたことの方が鮮明に覚えている。
次負けた方は焼肉奢り、とか言ってたけど、退職に向けての忙しさで大倉くんとはボーリングに行くどころか私はまた、屋上に行くのもご無沙汰していた。
「大倉とはそういう話するん?」
「え?いや…話すのはたまにだけど、でも確か、彼と別れた話はした気がする。」
私は平常心を保とうと、亮から目をそらし止まっていた食を進める。
「なんやねん。俺そんなん、全然知らんかった。」
亮は完全に、拗ねていた。不貞腐れ、ヘソを曲げた子供のように眉をひそめて唇を尖らせる。
「飲みに行く時にでも話そうと思ってたんだけどね。」
「それはそうかもしらんけど…大倉が知ってて俺は知らんってなんか、嫌や。俺にも相談してくれればよかったやん。」
「亮だって忙しかったでしょ?それに、新婚なんだし。」
「新婚は関係ないやろ。どうでもええ女やったらまあ、相談されてもって感じやけど、Aはちゃうんやし。」
『友達』だから。
亮の中では、私が男とか女とかそういうのは関係ない。『友達』というただひとつの枠組みの中で私はこれまでもずっと、動かされることはなかったし。これからも、ない。
だから今の会話だけ側から聞いたら、既婚の男が他の女のことで嫉妬するなんて不純に思えるかもしれないけれど、そうじゃないことを私は知っている。
亮にはそういう、子供じみた気の小さいところがあるのだ。
数少ない友達を大切に思うばかりに亮はくだらないことで拗ねてみせる。学生の時からそうだった。
それはちいさな子供が仲の良い同性の友達が他の友達と仲良くしているのに嫉妬を覚えるのと同じことで、
今更その嫉妬を勘違いすることはもちろんないけれど、私は亮のそういうところが嫌い。
とても繊細で純粋で、幼くて思わず愛おしいと思ってしまうそういうところが、嫌いだ。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時