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そういえば、と亮の職場はこの近くだったことを思い出す。
亮と会うのはうちにホーリーを迎えに来たぶりだ。久しぶりに顔を見れて嬉しいけれど、心のどこかに会って
「似てるひとおると思ったらやっぱAやった。どうしたん?仕事の用事?」
亮は嬉しそうに私に駆け寄った。
ふんわりと香る、亮のオーデコロンの香り。出会った時からずっとこのにおい。男物の、柑橘とムスクが混ざったようなにおい。
「用事というか…面接があって。」
「面接?なんの?」
「実は、転職することにしたんだよね。」
眉をあげ「そうなん?」と驚いた表情の亮に私は曖昧な笑みを浮かべた。
「つか、昼飯食った?まだやったら一緒に食おうや。俺もちょうど今から飯行こう思ってたとこやし。」
そう言いながらすこし伸びた前髪を避けた亮の左手にきらりと指輪が光る。
亮は百パーセント私が頷くのを期待しているように返事を待っていたから「じゃあ」と頷いた。
「この近くにウマい店あんねん」って亮が連れてきてくれたのはサラリーマンで賑わう定食屋さんだった。
とるに足らないことなのに、もういい加減気に留めるべきではないとわかっているのに、私は店内を見渡しながら苦く渋いものを食べているような気持ちになる。
学生時代からそうだった。
亮は昔からある小汚い中華料理屋の、だけど味はとても美味しい冷やし中華が好きだったし、カウンター席だけのラーメン屋に行くのも好きだった。ファミレスのオムライスを頬張って「このスタンダードな味が一番好きやねん」ってよく言っていた。
私だって、見栄えばかりがよくて値段はちっとも可愛くないレストランや女の子たちが好きそうな洒落たバルより、安くて美味しいラーメン屋だったり狭くて炭火の匂いが充満する焼き鳥屋の方が居心地がいいし、好きだった。
それなのに、亮が気がある女の子や彼女は普段は行くどころか貶しさえする格好のついたレストランだったりお洒落なバーだったりに連れていくことを知ったとき、私は今まで行こうとも思わなかった場所にどうしようもなく憧れを抱いた。
その気持ちがよみがえっきて胸を炙るのだ。
往生際の悪い女。
心の中で私は私自身にそう、呟いた。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時