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「貴方の好きで嫌いなところ」 ページ33








「えーと…聞きたいことはこれくらいやな。あと、なんか質問あります?」


面接はもう何年も前の就活時以来だったからすこしばかり肩に力が入っていた。

それでも面接官の、大倉くんの先輩である、村上さんは目力は強いけれどとても気さくな方だったから、きちんと言うべきことは言えたと思う。


「いえ、大丈夫です。」


「ほんなら、面接はこれでおしまいですわ。」


「ありがとうございました。」


深々と頭を下げて顔を上げると、「あ、そや」と村上さんは何かを思い出したような顔をした。


「小耳に挟んだんやけど今の職場、ブラックなんやって?」


「え…あ…、そう、ですね。どちらかと言うと。」


なんでご存知なんだろう、と戸惑ったけど、きっと大倉くんが言ったんだろう。村上さんも関西の出身みたいだし、仲が良いのかもしれない。


「山田さん、しっかりしてそうやし前の職場での勤務歴も長くて忍耐もありそうやから僕としてはいい方向で考えたいんやけど、退職はすんなりできそうですかね?」


「…ありがとうございます。先日上司と話をしまして、12月末日で退職することになっております。」


「ん、了解。大変やったやろ、話つくまで。」


「…はい。」


体を縮こめて頷く私に村上さんはワハハと笑った。


「ほな、また一回総務部と上に話通してから連絡します。今日はもう帰ってええで。ご苦労さま。」


書類をとんとん、とデスクで整え立ち上がった村上さんに私も立ち上がり、もう一度丁寧にお礼を言ってから、会社を後にした。



大倉くんの務めている会社は、洋酒の輸入と販売を行う専門商社で、会社自体はそれほど大きいわけではないけれど、大倉くんが言っていた通りお給料も福利厚生もいいしオフィスも綺麗で明るい。

大倉くんには今日面接であることは連絡してあって、もしかしたらオフィスで会うかもしれないなんて思っていたけどそれらしき姿は見なかった。



お昼時の都会のオフィス街。

何人ものサラリーマンやOLがお財布だけ手に持って行き交っていた。


面接が終わっていくらかほっとしたのか、急に空っぽのお腹が唸り声をあげはじめて、どこかで昼食を取ろうと歩き出した時、


「A?」


後ろから呼び止められた。



振り向くとスーツ姿の亮がいた。





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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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