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屋上のドアを開けた時、煙草を吸う彼のおおきな後ろ姿が見えて私の心はささやかにも踊った。久しぶりに友達に会うとき、そういえばこんな気持ちになったっけ、と思い出す。

ドアを閉めた音に振り返った大倉くんは、すこし驚いた表情をしたけどすぐにうっすら笑って煙草の煙を吐き出した。


「死んだんかと思ってたわ。」


私が大倉くんの隣に並んで柵に寄りかかると、大倉くんはそう言った。


「これ、返すの遅くなってごめん。一応、洗ってある。」

「そういえば貸したんやったなこれ。忘れとった。」


パーカーの入った袋を受け取りながら大倉くんは私の顔をじいっと見つめる。

久しぶりに大倉くんの整った顔を間近で見ると、なんだかこちらが恥ずかしくなってしまう。あまりにも綺麗で。ドキドキしたりはしないけど、たじろいでしまうのだ。


「…何?」


思わず後ずさりの姿勢になりながらそう訊く私に大倉くんはやっと私から視線を動かして煙草を咥えた。


「なんか、やつれたな。…仕事?」


私は自嘲的に笑って頷く。


「俺週に2、3回煙草吸いにここ来ててもおらんかったから、そんなとこなんやろうなとは思うてたけど。」


「…なんだか、終わりのこない悪夢ってかんじ。時間だけどんどん過ぎていっちゃう。」


「…ほんま、辞めること考えたほうがええんとちゃうの?今の仕事。」


それは軽率な提案に聞こえて、つい顔をしかめてしまった。


「…前もそんなこと言ってたけど、普通に考えて無理だよ。特に何か資格持ってるわけでもないし、学位も学士だけで名前だけで採用もらえるようないい大学出てるわけでもないし。転職なんて、簡単じゃないんだから。」


反抗的にも取れる口調で言い返した私に、大倉くんは宥めるように、

「誰も次の就職先の当てもないのに辞めろなんて言うてへんやん。」

そう言った。



「うちの会社、こないだ俺の同期の女の子が寿退社してもうて求人しとるらしいで。」


「…え?」


「人事から聞いたんやけど募集は中途採用だけで、ワードエクセルが普通に使えれば他に特別な資格はいらんみたいやし…まあ、一般職やから仕事内容は単純かもしらんけど給料も割といいみたいやし、福利厚生もちゃんとしてるしな、うちは。」


私はただ大倉くんの横顔を見てると大倉くんはまた煙草を咥えて、口から離すとふー、と煙を宙に漂わせる。





*→←「気まぐれな会合」



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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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