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「また泣きそうな顔しとる。」
ホーリーをゆっくりと撫でる手は止めずに、遠くを見ながら大倉くんは言った。
「しあわせそうな姿、見せつけられたん?」
そして、いたずらな顔で私の方を見てきた。私はちいさく首を横に振って俯いた。
「見せつけられたとかそんなんじゃなくて、私が勝手に傷ついて虚しくなってるだけ。
…滑稽でしょ?」
「まあな。不憫やなとは思うわ。」
「...大倉くんはすこし正直すぎると思う。」
「ほな、なんも言わんと同情してほしん?」
「それも嫌。」
「ただのワガママやん。」
馬鹿にしたように笑ってくる大倉くんに、その中間ってものがあるでしょうよ、と思ったけど言わなかった。どうせまた屁理屈で返されるに決まってるから。
大倉くんの腕に顎を乗せて穏やかな表情で私を見上げるホーリーの頭に手を伸ばし、頭の骨格がよくわかるそのちいさな額を撫でる。
ホーリーはいいな。
何にも考えなくたって、こうやってみんなに愛されている。いいな。
そんな荒唐無稽なことを考えてしまう自分に浅い笑みを浮かべながら、ふとした疑問が思い浮かんだ。
「…そういえば、大倉くん、彼女は?」
いつも私のことばかり突っ込んでくるけれど、大倉くんの恋愛に関する話は聞いたことがなかったな、と今更思ったのだ。
まあなんとなく面白いほどモテることくらいは想像ができるけど。
「おったらAちゃんとボーリング行ってへんやろ。」
「……。」
もう二度とボーリングなんて行ってやらない、と私は心の中で決意をした。のに、まるでそれを見透かしたように、
「もうボーリング行かんとか言いっこなしやで。冗談くらい楽しく笑えるようにならんと。」
とにやにやと笑う。
「一年前に付き合ってた彼女とは別れたんだ?」
私も懲りない。低レベルな大倉くんのちょっかいを助長するようなことを聞いてしまった。
けれど、すこしでも怯む顔が見たくて幼稚な反撃をしたのに大倉くんはちいさく首をかしげた。
「一年前?ああ、亮ちゃんの結婚式んときのは嘘やで。彼女おるとでも言わんとうっとおしかったんやもん。」
「…モテるひとは大変だね。」
「ほんま、大変やねん。」
自分で言うんだ、と思ったけど大倉くんは珍しく顔を歪ませたから何も言わずその横顔をみた。
大倉くんの腕の中のホーリーは目を瞑っていた。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時