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大倉くんは私よりずっと、ホーリーとじゃれ合うのが上手だった。
笑いながらホーリーの短い毛をくしゃくしゃと撫で回して、しまいには携帯でホーリーと自撮りまでし始めた。ホーリーも嬉しそうに尻尾を振っている。
ホーリーとじゃれ合う大倉くんは、なんだかおおきな犬みたい。二匹の犬が遊んでるみたいだ。あまりにもやさしい目でホーリーを見るもんだから、そんな表情できるんだってすこし感心してしまった。
「犬、慣れてるんだね。」
ゆるく体育座りをしたまま、大倉くんとホーリーを眺める。
「実家でずっと犬飼っててん。」
「へえ。何犬?」
「今はラブラドール。写真見る?」
「うん、見たい。」
片腕でホーリーを抱きながら、もう片方の手で携帯に指を滑らせて私に差し出した。
画面の中にいたのは美しい栗色の毛をした目のやさしいラブラドール。私はそれをまじまじと眺める。大倉くんにすこし似ているようにも見えた。
「かわいい。綺麗なワンちゃんだね。」
「せやろ?めっちゃ賢いねん。」
自慢げに笑う大倉くんの頰をホーリーがぺろっと舐めた。
「あ、ホーリー、おまえやきもち妬いてんねやろ。」
いじらしなぁってまた大倉くんはホーリーを撫でて、私はそれをぼうっと眺めるのだ。
涼しい秋の風が吹いてすこし背中がぞくりとした。
「…へくしゅっ」
くしゃみが出て鼻をすする。羽織るもの、持ってくればよかったな、と思ってたら、
「ちょっとホーリー抱えてて。」
大倉くんが自分の腕の中にいたホーリーを持ち上げて私に抱えるよう促した。そしておおきな体をもぞもぞと動かして着ていたパーカーを脱ぐと、ホーリーと引き換えるみたいにパーカーをぱさりと私の膝の上に置く。
「それ、着とき。」
「え…、」
「また風邪引いたら困るやろ。」
「…ありがと。」
おおきな白いパーカーを頭の上からかぶると、また、甘い柔軟剤の香りがした。パーカーに残った大倉くんの体温がふわりと体を包んで、何故だかすこし息が苦しくなる。
私の体よりふたまわり以上おおきなパーカーはぶかぶかで、落ち着かない私はパーカーの袖をひっぱったり、手を出したりしてみてしまう。
「大倉くんは寒くないの?」
「ホーリーで暖取ってるから平気。」
意地悪なことを言ったかと思ったらやさしくて、大倉くんはよくわからない。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時