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さわさわと風が吹いて半袖のTシャツから出た腕に寒さを覚え、ホーリーをぎゅうと抱きしめた。
「なんだか、寂しいね。」
ホーリーが、くうん、と切ない鳴き声を上げた。同情してくれているのだろうか。私は笑いながらため息をつく。
なんかいいこと、ないかな。
またそうやって思いながら、ホーリーの背中をやさしく撫でていると背後で足音がした。ホーリーが耳を立ててワン!と嬉しそうに吠える。
リードを持ったまま腕から解放してあげると、ホーリーは元気よく近づいてきた足に駆け寄った。
「イタグレってやっぱほそっこいんやな。」
大倉くんはしゃがみこむと、よしよーしって両手でホーリーを撫で回した。
「…用事は?」
「え?用事って?」
私が尋ねると、ホーリーを撫でながら顔を上げてぽかんとした表情を見せてきた。
「用事あるからホーリー預かるの断ったんじゃないの?」
亮が今日、そう言ってた。大倉に頼んだんやけど用事あるから断られたって。
なのに大倉くんはけろりとした顔で、
「ああ、それは嘘や。」
と言う。
「やって休みの日はマイペースにゆっくり過ごしたいやん。」
私は恨めしい思いで呆れ笑いを浮かべた。大倉くんが預かってくれてたら、ふたりに会わなくても良かったのに、なんて。そんなこと口にはしないけど。
「亮ちゃんたち、どこ行くって?」
「沖縄だって。」
「ふうん。…ホーリー、こっちおいで。」
大倉くんはホーリーを抱き上げて、私の隣によいしょ、と腰を下ろした。
「おまえ、お利口サンやな。亮ちゃんに似なくてよかったわ。」
おおきな手でちいさなホーリーの頭を撫でながら子供に話しかけるみたいにそう言うから、私は眉をひそめて笑う。
「どういうこと?」
「Aちゃんが自分にずっと片想いしてるなんて知らんと嫁と旅行行くために飼い犬預けるような無神経な男はあかんよなぁ。なぁ、ホーリー。おまえもそう思うやろ?」
「…馬鹿にしてんの?」
本当に、大倉くんって口が減らない。もう慣れてきたけど、それにしてもむかっ腹が立つ。きっと私が怒るのを見て面白がっているんだろう。なんて、悪趣味。
「いや、ほんまにそう思ってるだけやけど。」
「じゃあ大倉くんが預かってくれれば良かったじゃん。」
「それは結果論やん。断った時にAちゃんのこと知らんかったし。」
唇を尖らせる大倉くんの腕の中でホーリーがきょろきょろと顔を動かした。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時