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ホーリーは本当に利口な犬だと思う。


今日はホーリーを預かるためにいつものように遅くまで残業することができなかったから、残った仕事はほとんど持ち帰ってきていて、

私はさっきから小一時間、ノートパソコンに向かっているというのに彼はずっと大人しく扇風機の前に寝転んだり、たまに亮が持たせたおもちゃのぬいぐるみをかじったりしている。


「ごめんね、相手してあげられなくて。」


何か飲もうと思って立ち上がった時にかけ寄ってきたホーリーの頭を撫でてやると、キッチンに向かう私の後を追ってきた。

ホーリーの毛はつやつやとした上品なグレーで、歩くたびにフローリングと爪が当たって、カツカツと小さく音が鳴る。


私は麦茶をグラスによそって、ホーリーにはビスケットをあげた。明日は土曜だけど、仕事をしなければどうにもならない。


やっぱりこの間熱で数日休んでしまったのが大きく響いていた。

パソコンに向かってばかりだから、たっぷりと目に疲労を感じるし、かすかに頭痛もする。



「ねえ、すこし休憩してもいいかな。」


キッチンカウンターに寄りかかって麦茶を飲みながら、私の足元にお行儀よく座ってこちらを見上げるホーリーに聞いてみた。


「ホーリー、一緒に屋上来る?」


私がそうたずねると、まるで返事をするみたいにホーリーは尻尾をぱたぱたと動かして舌を出したまま私の前を行ったり来たりする。

その姿が可愛らしくて私はくすくすと笑った。



外は涼しい風が吹いていてもうすぐ夏も終わりだということに私は気づく。

リードをつけたホーリーをひと息で抱え上げるとホーリーは私の腕の中で忙しなく私の顔を覗いてきた。以前預かったときよりほんのすこし大きくなったとはいえ、成犬でも体が小さいホーリーを抱きかかえるのはそんなに大変ではない。


屋上の扉を開けると、そこに降り注ぐ月の明るさはいつもよりずっと薄かった。触れたら崩れてしまいそうな線のような月が空に浮かんでいる。今日は新月だ。


ホーリーを抱えたまま、コンクリートの地面の上に腰を下ろして、空を仰ぐ。

つややかなホーリーの背中を撫でると、ホーリーは嬉しそうに目をくるくるさせながら私の頬っぺたを舐めてきた。


「くすぐったいよう。」


ふふっと笑ってホーリーのおでこにキスをしてみる。犬を飼うのは、いいかもしれない、とふと思ったりもした。





*→←「新月、二匹の犬」



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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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