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「新月、二匹の犬」 ページ23








「散歩と夕飯は済ましてあるから、もし欲しがったらこのビスケットやっといて。おもちゃとかリードもこんなか入っとる。」


「うん、わかった。」


私は頷くと亮からトートバッグを受け取った。


「散歩は一日一回行けたらでええし、あと…トイレは、」


「シート敷いとけばそこでしてくれるんでしょ?前預かった時と同じようにすればいいんだよね。」


「あ、おん。」


「ホーリーのことなら大丈夫だから、ふたりともゆっくりしてきて。万が一何かあったら連絡する。」


「ありがとな。むっちゃ助かるわ。」


お得意のはにかみ笑いを浮かべる亮の背後から亜紗美ちゃんがおずおずと艶やかなうすみず色の紙袋を差し出してきた。


「ごめんね、Aちゃん。お世話になります。あのね、これ。すこしだけど…。」


流行りに疎い私でも知っている、有名なパティスリーの金色のロゴが印字された上品な紙袋。


「そんな気つかわなくてよかったのに…。」


「ホーリー、よろしくお願いします。」


眉毛を下げながら両手を合わせるその仕草は女性らしくて可愛いと思った。亮も亜紗美ちゃんも、やっぱりどことなく嬉しそうだった。


「うん。楽しんできてね。」


「ありがとう。」


私たちのやりとりを私の気持ちなどこれっぽっちも知らない亮は目をきょろきょろさせて口角を上げながら見守っていた。

亮は、私と亜紗美ちゃんの仲が良いとやっぱり、嬉しいんだろうか。そんなことを無意識にも考えてしまう。



何を聞いたわけでもないし、結婚して一年なんだから当たり前なのかもしれないけれど、ふたりが上手くいっていてしあわせな結婚生活を送っていることは見てすぐわかった。

亮の表情は以前よりもっと、柔らかくなっていたような気がする。亮と亜紗美ちゃんの笑顔は、似ていた。似てきていた。


亜紗美ちゃんは、相変わらず可愛くて綺麗で。今では髪型やメイクにも無頓着になってしまった私とはまったく違って、頭のてっぺんからつま先まで完璧だった。色白で華奢な指にはめられた、シルバーの結婚指輪が脳裏によみがえる。



嫌だな。

僻みや妬みのような醜い気持ちがじわじわと蝕んでくるようで。



ふたりが去って行った玄関で、一度深呼吸をすると、足元に置かれた犬のキャリーバッグを覗いた。


「ホーリー、久しぶり。」


そう言ってバッグの扉を開けてやると、目を爛々とさせたホーリーは飛び出して私の周りをくるくると回った。









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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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