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「最後手え変なふうに滑ってん。あれなかったら絶対俺が勝ってたって。」
「ずるいわあ。最初手加減してたやろ。」
向かいに座っている大倉くんはさっきからぶつぶつと負け犬の遠吠えをしている。仏頂面はまるで子供みたいで私はちいさく笑った。
大倉くんの意地悪な言動にやられっぱなしだったから、ようやくお見舞いできたみたいでなんとも気分がいい。
「負けてくれた大倉くんに乾杯。」
烏龍茶の入ったグラスを持ち上げてにっこり笑うと大倉くんはわざとらしくため息をついた。
ボーリング後の夕食に選んだのは道中にあった中華料理屋で。
目が冴えるくらい赤い看板が目立つ、だけど随分前からあるらしく店内の床やら壁やらには油が染みてる感じの古い店だった。
恨めしそうな表情で私を見る大倉くんに勝ち誇った笑みを向けていたら、ちょうど店主らしい白髪混じりのおじさんがぼそぼそした声で「レバニラと、回鍋肉と白ご飯ふたつね。餃子は今持ってくるから。」と、私たちのテーブルに食事を並べた。
ごま油とオイスターソースの匂いが空きっ腹を刺激する。
「美味しそう…。」
「これにビールあったら最高やねんけどな。」
「車なんだからしょうがないよ。」
大倉くんと私はお箸を持っていただきます、と同時に手を合わせた。
「んま!」
口の中にレバニラを入れながら目を大きく開く大倉くん。がつがつとご飯をかきこむ姿はやはり中学生とか高校生とか、それくらいの男の子に見える。
綺麗な顔したひとが大胆にご飯を食べる姿はなんだか面白くて私は回鍋肉のキャベツとお肉を口に入れながらその姿ををついつい眺めてしまう。
「このレバニラめっちゃうまい。食べる?」
「いいの?」
「おん。その代わり回鍋肉一口ちょうだい。」
「いいよ。好きなだけとって。」
なんだか不思議だった。
いろいろ思いつつも純粋にボーリングも今も楽しんでいる自分がいること。
大倉くんとは知り合って間もないに等しいのにふと気がつくとまるで古くからの友達といるような気持ちになっていること。
とても今の時間と、彼と別れ話をしていた時間が同じ今日の中にあることを信じられなかった。それくらい、とても素直に私の心は安らいでいた。
随分と久しぶりな、安らぎだった。
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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時