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がこーん、と気持ちのいい音と共にピンが面白いくらい綺麗に倒れた。また、ストライク。ターキーだ。

振り向いた彼の顔はまるで、当たり前だ、とでも言いたそうな顔で私は顔をしかめる。


「別に来なくてもよかったんじゃないの?初めてだとは思えないくらい上手いじゃん。」


球を手に取り気の無いような態度で立ち上がると大倉くんは呆れ顔で私が座っていたベンチにどさっと腰をかけた。


「負けとるからって拗ねんといてよ。」


今のところ大倉くんの方が先制していて、残り2フレーム。学生の時は結構得点女王だったのに、さすがに何年もやってないとコツを忘れているものだ。


「別に拗ねてなんかない。」


「それやったらそんな顔せんとはよ投げや。」


まったく憎々しい。こうなったら負けるわけにはいかない。勝って悔しがっている顔くらい見て笑ってやろう。

狙いを定めてから、勢いをつけてタイミング良くボールを離す――…



がこーん



「やった。」


真ん中にまっすぐ線を引いて転がった球はピンをすべて倒し消えていった。振り向くと同時に大倉くんと目が合って、爽快感に思わず小さくガッツポーズを取ってしまったことに恥ずかしさを覚える。


「そういう顔、ちゃんとできるんや。」


物珍しそうに私をじっと見上げる彼。


「え?」


「嬉しそうな顔。初めて見た。」


つい昨日、『いつも不幸そうな顔をしてる』と言われたことを思い出した。恥ずかしさやら居心地の悪さで私は彼から目を逸らす。


「…放っておいてよ。」


「案外元気そうやん。」


立ち上がって球を持ち上げながら大倉くんはふっと口角を上げた。


「てっきり泣きはらしたような顔でくるかと思ってたわ。」


完全に馬鹿にされてる。

ほんとに、デリカシーがない。何か言って黙らせたいけど、上手い突破口がないから代わりにため息をついて、

「…もういいから、はやく投げなよ。」

球を持っている彼の肩を追いやるように押した。


肩を押された彼はやっと私に背を向け球を投げる準備をしたかと思ったら、


「あ、なあ。」


上半身をひねって振り返ってきたから


「今度はなに?」


苦い顔をしてそう聞き返すと


「このゲーム負けた方が夕飯奢りな。」


にやりと笑ったそう言ってから長い腕を無駄なく動かして球を投げた。







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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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