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診断は、特に菌の感染とかではなくて疲労からくる風邪だった。体温は測ると39℃近くあって、仕事は熱が下がるまでしばらく休みなさい、と言われた。

薬の処方を待ってる間、会社に数日休むと連絡して(当然快い反応はされなかったけど)、大倉くんに連絡をすると薬局の前に車をつけて待っていてくれた。


「どうやった?」


片手でハンドルを握りながらちらっと視線をよこす大倉くん。


「ただの風邪だった。会社はしばらく休めって。」


「せやろな。」


「…今日会社休んで正解だったかも。」


日が傾いて橙色に染まる外の景色を見ながらぼそりと呟く。


「…なんか、限界だったのかもしれない。」


ほとんど独り言だった。自分の今の有様を確認するような。

大倉くんは何も言わず前だけ見て運転している。聞こえたのか聞こえなかったのかわからないけど、別にどちらでもよかった。

乗った時はひんやりつめたかった車のシートは体の熱でとっくにぬるくなっている。ごー、と音を立てる冷房の風が顔に当たって頰が一瞬つめたくなって熱くなってを繰り返す。

相変わらず、ちいさな音でラジオが流れていた。


「今日なんか腹んなかいれた?」


マンションの駐車場に停まった車から降りて、お礼を言おうとした時、大倉くんは車のドアを閉めながら私にそう聞いた。


「ううん、何も。」


私が首を振ると後部座席のドアを開けて大きい体をかがませたかと思ったら、ビニール袋を出して出てきた。


「さっきスーパーで食べられそうなもん買うてきたから。これ持ってって。」


大倉くんが両手で広げた袋の中身を覗くと飲み物やらフルーツやらいろいろ入ってて、私はすこし拍子抜けしてしまう。


「え…じゃあお金、」


袋を持ってエレベーターのほうに歩き出した彼を追いかけて、ハンドバッグに手を突っ込むけど、


「今度でええわ。今日はもう食べられるもん食べて薬飲んではよ休み。」


大倉くんはちいさなため息を吐いた。



穏やかな沈黙が流れる。不思議と気まずさはない。

とりあえず今は風邪を治すことだけ考えよう、と心の中でそう思った。


「荷物、上まで持ってく?」


「大丈夫。」


じゃあ、と袋を私に手渡すと同時にエレベーターは二階に着いた。


「お大事に。」


そう言って片手をポケットに入れてエレベーターを降りた大倉くんに、


「いろいろありがとう。」


お礼を言うと大倉くんはこちらを振り返ってふっと口角を上げた。





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蒼 夢見子(プロフ) - すぅさん» すぅ様、初めまして。コメントありがとうございます^^私には勿体無くも有難いお言葉いただけてとても嬉しいです(涙)これからも楽しんでいただけるものを書けるよう頑張ります! (2018年12月3日 11時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
すぅ(プロフ) - こんばんは。今まで読んできた小説のなかで一番素敵な物語です。これからも応援しています (2018年12月3日 0時) (レス) id: 6e6892a55b (このIDを非表示/違反報告)
蒼 夢見子(プロフ) - 茜音さん» 茜音様、こんにちは。こちらにもコメントいただけてとっても嬉しいです...(涙)この間とはすこし違ったいたずらで甘い大倉くんを書きたいなーと思い書き始めました。そう言っていただけると俄然執筆への意欲が湧いてきます!ありがとうございます^^ (2018年11月21日 10時) (レス) id: d57fe18bd1 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - こんにちは!こちらのお話にもコメント失礼します。優しいんだか冷たいんだか分からない大倉くんとっても魅力的です好きです(;_;)ヒロインちゃんが幸せになれることを密かに願いながら応援しております、、、! (2018年11月21日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蒼 夢見子 | 作成日時:2018年11月13日 22時

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