１７４、並んで歩こう ページ15
開いていた本を閉じてふと顔を上げれば、時計の針は既に11時を過ぎていた。存外、長く集中してしまったようだ。
「フェイタン、そろそろ行きましょうか」
「待ちくたびれて死ぬかと思たよ」
「自由にしていていいって言ったのに」
本を棚に戻しながらフェイタンの皮肉に返答すれば、彼はフンと鼻を鳴らして立ち上がった。何もせず隣にいた理由とかを話す気はないらしい。
フェイタンは私の後ろを何も言わずついて歩く。何となく居たたまれなくて振り返ると、またも眉を寄せられてしまった。
「あの、隣で歩かないの？」
「行き先わからないのに隣歩けるわけない」
「それも、そうだけど」
そういえば行き先を決めていなかったことにたった今気付いた。拠点から離れることしか考えていなかったが、離れるにしてもどこに向かおうか。
「──手合わせの場所」
真っ先に思い付いたのは、彼と私が手合わせをした場所。ぱっと思い付いただけだけれど、あそこなら距離も申し分ないしちょうど良いのではないだろうか。
「行き先、決まったわ。先日手合わせした所に向かいましょう？」
「……決まてなかたのか」
「うっ。ごめんなさい……」
行き先を告げないどころか決まってすらいないのに出発しようとしたのはちょっと行き当たりばったりすぎたかもしれない。
申し訳なさに視線を下げると、フェイタンが溜め息をついて、私の隣までやってきた。どうしたのかと顔を上げればどこか気だるげな彼の目と視線が合う。
「何してるか。隣歩いてやるからととと歩け、夕方になてしまうよ」
「……ええ！」
私の歩みに合わせてフェイタンも足を進めてくれる。やはり隣を歩いてくれる方が気楽だし嬉しい。
弾む気持ちにつられて早くなる足取りのままに、外へと繋がる出入り口のある広間へ入って。以前はなかった物が視界に入って目を向ける。
「あれって、」
「よう、ソフィア。徐念に行くのか？」
何かしら。フェイタンに問いかけようとして、背後からかけられた声に足を止める。振り返れば、面白そうな笑みを浮かべた二人の男が立っていた。
「ノブナガ、それにウボォーギン！ ええ、今から行くところなの」
「そうかそうか。それにしてもフェイタンが大人しくついていくとは思えなかったんだが、どういう風の吹き回しだぁ？」
「……徐念は必要、だからやるだけ。別にこいつを信用してる訳じゃないね」
またもそっぽを向くフェイタンに、素直じゃねぇなぁとノブナガが笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 334人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユウ - 一気読みさせてもらいました。応援してます。ヒソカ落ち希望です！ (9月18日 1時) (
レス) id: 9180eb740d (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - 更新待ってます！！続きがとても気になります！！イルミ落ちがいいです！ (2022年6月6日 0時) (レス) @page32 id: b76b8db090 (このIDを非表示/違反報告)
まや(プロフ) - 作品読ませていただきました！！とても面白くてこのシリーズ大好きです！もし、この作品がまだ更新されるのであれば、気長に待ってます！頑張ってください！！ (2021年1月30日 18時) (レス) id: f151b0ddd6 (このIDを非表示/違反報告)
彩香(プロフ) - 初めて作品を読ませていただきました！私はこのシリーズがとても大好きになりました！もし、作者様がこの作品を覚えているのであれば更新されるのを楽しみに待っています！ (2021年1月1日 21時) (レス) id: 5e84d40654 (このIDを非表示/違反報告)
maki(プロフ) - このシリーズ大好きです！更新待ってます！ (2020年3月24日 18時) (レス) id: 94544c805e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クロ | 作成日時：2019年9月4日 4時
