少女と雪景色 ページ21
『じゃあ、私外で周囲見てるから連絡よろしく』
見張りを続けてしばらく。私たちは上司と交互に定期連絡を取っていた。状況に応じて手段は変えるが、足がつきにくい公衆電話を使うことが多々ある。積りはしない程度に、しかし降り続ける雪。ボックスの外は冷える。
『一人だと尚更冷えるな…』
道行く人々も急ぎ足で、表情は決して明るくはない。…それは彼女も同じ様で。感傷的にでもなっているのだろうか、大粒の涙を浮かべてlittleの手を引く蘭ちゃんが前から歩いてくる。本来なら見て見ぬ振りが良かったのだろうけど…。
『どうして泣いてるの、girl?可愛い顔が台無しよ』
「えっ…」
ついつい、彼女の涙を拭ってあげていた。驚いたのか、口をポカンと開く彼女がおかしくて。対照的に、足元でこちらを牽制するような少年がこちらを見ていた。膠着した場にどうしたものか…と片手を彼女の頰に添えたまま曖昧に微笑む。その空気を断ち切ってくれたのは、やはり相棒だった。
「また泣いているのか…」
「え?」
間近で、二人の驚いた顔をまじまじと眺める。その間に電話ボックスから出てこちらへ近付いてくる秀一。足音は私の真横で止まったので、それに合わせて私も彼女から手を離す。
「お前はいつも泣いているな…」
『ね、あの時と一緒。あなた、絶対笑ってる方が可愛いのに』
私たちの言葉に、彼女は今度は自ら涙を拭って強気に言い返す。
「いけませんか?」
その反応に満足したらしい秀一は、そのまま歩き出す。軽く促されたので、私も彼の後を追って歩みを進めた。
「いや…思い出していたんだ…お前によく似た女を…」
二人を追い越し、すれ違う私たち。
「平静を装って陰で泣いていた…バカな女の事をな…」
『泣くのは悪い事ではないよ、その分強くなればいいの』
そのまま振り返る事なく、二人と少し離れて路地裏に入ってからようやく彼は私の腰を引き寄せた。
『…やっぱり覚えてたみたいだね』
「そうだな…。先にお前が接触してるもんだから、少し驚いたよ」
『そんな顔してなかった癖に。…ところでその女って誰の事思い浮かべたの?』
「お前以外にいるか?」
しれっと優しい目をして言われるものだから、反論も何も口に出来なかった。正直照れ臭いのだ。
『そんなの、昔の話でしょ…今はマシになったよ』
「ああ…だから、過去形で言ってやったんだろう?だいぶいい女になったよ、お前は」
少し頰を膨らませる私に、彼は笑う。雪はいつのまにか止んでいた。
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リュウヤ(プロフ) - 優花さん» メッセージありがとうございます。私はまだ映画を見られていませんが、赤井さんが1番の推しです。なかなか話を書く余裕がないため一旦停止としてますが、見つけてくださってありがとうございます。励みになります! (2021年7月6日 0時) (レス) id: 8b594e4d48 (このIDを非表示/違反報告)
優花 - 緋色の弾丸を見て、ココに来ました。 赤井さんはカッコいいですよね! 詳しくはないですが、コナンの中で、一番の押しです。 更新停止なのは仕方がないですが、復帰を願っています!頑張ってください! (2021年7月4日 20時) (レス) id: ef3d2855ab (このIDを非表示/違反報告)
リュウヤ(プロフ) - 真由さん» メッセージありがとうございます。理想だけ詰め込んだ赤井さんです…!映画もうすぐですね、ぼちぼち構想練ろうかな〜と思いつつあります。観に行ったら正気でいられる自信がないですね…w (2021年4月14日 17時) (レス) id: 441313cccd (このIDを非表示/違反報告)
真由 - 丸々1日かけて一気読みしました!めちゃめちゃめちゃ好きです!!!毎シリーズ(?)赤井さんのスパダリ具合にぎゃあぎゃあ叫びました笑次の更新までにもう一周してこようと思います。(((\(≧∀≦`)/))) (2021年4月13日 20時) (レス) id: 553236276e (このIDを非表示/違反報告)
リュウヤ(プロフ) - 星の桜さん» メッセージありがとうございます。随分前の作品を見てくださってありがとうございました。そちらもコロナにはお気を付けて。気長にお待ちください! (2020年4月27日 8時) (レス) id: 441313cccd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リュウヤ | 作成日時:2018年7月27日 23時