過去との決別 ページ2
今後の方針はあちらである程度固めてきていた。初日はひとまず、各々の体調管理に当てる。とりあえず今は頭を休めようと、宿泊先の部屋で一息ついた所だった。
「新菜、すまないが一つ頼みがある」
『…うん?』
「以前話したのを覚えているか?そろそろ潮時かと思ってな…お前に任せたいんだが」
そう言って秀一は自身の髪を摘んだ。そういえば訓練生時代に、切る時はやってあげるよ…なんて言ったっけか。それが今になるとは。
『一応聞くけど、本当に私が切っちゃっていいの?』
「お前だから頼んでるんだろう?」
『ふふ…そう言われちゃ引き受けるしかないね』
相棒がここまで言うのだ、応えない訳にはいかない。少しだけ、彼の髪を弄る楽しみがなくなってしまうのは惜しいけれど。
『どれくらいいく?』
「どうせやるならばっさり…か?女性はよく失恋で髪を切るって言うよな」
『人によるけどいるねー。その場合は過去の恋や自分とさよならってケジメかな』
「そうなると…今日で"
どこか楽しそうに笑う秀一に、動くなと念を押して私は彼の髪にハサミを入れた。髪が短くなるだけで、一気に印象が変わるものだと感心する。ついハサミを止めて、正面からまじまじと見つめてしまった。
「…見過ぎじゃないか?」
『う…ごめんごめん。私が知ってる秀一って既に髪長かったからさ』
「ホー?さては見惚れたか」
『自分で言っちゃう?事実だけど腹立つなー』
分かってて挑発するように口角を上げる姿が、ちょっぴり憎らしい。誤魔化すように頭を軽く小突いて背後に回り、彼の襟足と一緒に自分の呼吸も整える。うん、こんな物だろう…。
『はい、終わった。ここ片付けるから、シャワーで頭流しておいでよ』
「ん、了解…
私の頭を撫でた彼が風呂場に消える。辺りに散らばった髪をまとめ、今度こそ肩の力を抜いた。普段自分や人の髪を自ら揃えてやる機会は多いものの、彼の場合元が長かったのでだいぶ調整に苦労した。物の見事にさっぱりだ。
『まだ私の腕も鈍ってないな…』
「相変わらず器用だったよ、流石だなhoney」
『だっから…気配消して背後に立つな!』
懲りない彼は忘れた頃に仕掛けてくる。腰に回る腕に引き寄せられて、少し身体が浮いた。ご機嫌な彼は私を抱きしめて後頭部に顔を埋めた。
「お前が気付かないのが悪い」
『気付かせないつもりで近付かれたら難しいってば、無茶言わないで』
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リュウヤ(プロフ) - 優花さん» メッセージありがとうございます。私はまだ映画を見られていませんが、赤井さんが1番の推しです。なかなか話を書く余裕がないため一旦停止としてますが、見つけてくださってありがとうございます。励みになります! (2021年7月6日 0時) (レス) id: 8b594e4d48 (このIDを非表示/違反報告)
優花 - 緋色の弾丸を見て、ココに来ました。 赤井さんはカッコいいですよね! 詳しくはないですが、コナンの中で、一番の押しです。 更新停止なのは仕方がないですが、復帰を願っています!頑張ってください! (2021年7月4日 20時) (レス) id: ef3d2855ab (このIDを非表示/違反報告)
リュウヤ(プロフ) - 真由さん» メッセージありがとうございます。理想だけ詰め込んだ赤井さんです…!映画もうすぐですね、ぼちぼち構想練ろうかな〜と思いつつあります。観に行ったら正気でいられる自信がないですね…w (2021年4月14日 17時) (レス) id: 441313cccd (このIDを非表示/違反報告)
真由 - 丸々1日かけて一気読みしました!めちゃめちゃめちゃ好きです!!!毎シリーズ(?)赤井さんのスパダリ具合にぎゃあぎゃあ叫びました笑次の更新までにもう一周してこようと思います。(((\(≧∀≦`)/))) (2021年4月13日 20時) (レス) id: 553236276e (このIDを非表示/違反報告)
リュウヤ(プロフ) - 星の桜さん» メッセージありがとうございます。随分前の作品を見てくださってありがとうございました。そちらもコロナにはお気を付けて。気長にお待ちください! (2020年4月27日 8時) (レス) id: 441313cccd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リュウヤ | 作成日時:2018年7月27日 23時