TH※ ページ9
誰と寝ても、
一瞬チラつくのはAの顔。
「……っあ、あ、テヒョンくぅ
TH「黙って」
その子の高くてデカくて煩い声は
もう聞きたくない。
わかるよ、
俺、うまいし、
声出したくなる気持ちは、わかる。
でも、うるさいから、
黙って。
死ぬほど飲んだあとの
この行為は
しんどい。
早く終わらせたい。
「出してっ」
ってその子は毎回言う。
俺も子ども好きだよ。
けど、君との子どもとか産みたくないし、
てか、
君の目的は子どもじゃないでしょ。
どうせ最初から産む気なんてないんだ。
子どもをおろして、
そのあと俺に取り憑く罪悪感で、
俺をずっと自分のものにしてたいだけでしょ。
んで、金要求して、
楽して暮らしたいだけでしょ。
いつから俺って、
こんな汚れた人間になったんだろう。
TH「………っ、」
ギリギリで、彼女のお腹の上に出したら、
彼女は不服そうな顔をする。
んな顔したって、中に出してあげないよ。
TH「はぁ」
って、勢いよく彼女の横に
寝っ転がると、
彼女は言う。
「テヒョンって、昔はどんな男の子だったの？
高校のときとかモテたでしょ」
客はなんでかみんな
昔の俺を知りたがる。
きっと、自分だけが知ってる「テヒョンくん」
を探すのに必死なんだ。
TH「まぁまぁモテたけど、それだけだよ」
「恋は？」
TH「え？」
「恋はしてた？」
.
.
.
恋は、してた。
恋をすると、いろんなことに盲目になる。
恋って美しいものだって他人は言う。
でも恋ってさ、
人を傷つけて、
不安定にさせて、
何年経っても絡みつく嫌なもんだよね。
嫌なんだけど、ほんとに嫌なんだけど、
でも、あの頃を思い出すと
眩しくて恥ずかしくてギュッとなる。
.
.
.
TH「恋？俺がそんな純粋な奴に見える？」
「ふふっ見えなぁーいっ」
俺の嘘を、
俺の虚像を、
他人は簡単に信じる。
“テヒョンって何でそんなに悲しそうなの”
一歩踏み込んで
本当の俺を覗き込んでくれた人は
Aだけだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1267人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やきにくさん
| 作成日時：2021年2月11日 15時
