蜃気楼*26 ページ26
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「綺麗だなぁ」
「そうだね」
何日ぶり?と言っていいのかわからないが、
久しぶりの夕陽を見た。
朝焼けとは違う空の赤さとその真ん中の夕陽が海に映って、夜が始まるのだと伝える紫とのコントラストが綺麗だった。
「この時間になると少し冷えるな」
「そうだね」
適当に買ってきた飲み物やら食べ物ももうほぼなくなっていた。
ぼんやりとのぼってくる月を眺めていると、隣から視線を感じてそちらに視線を移す。
ジッ…と音がしそうなほど俺のことを見つめる太輔がいて、
月明かりに照らされて彫りの深い顔が作り出す影が、やけに美しかった。
やっぱり、美人だな……
「…ひろ」
「なに?……んっ」
腰に腕を回して抱き寄せられて、熱い唇が押し当てられた。
突然のことに驚いたけど、胸の奥の方から体が一気に熱を持つのがわかった。
力を込められた腕から逃げ出せなくて、そのまま受け入れる。
「んっ、……はふ、……んぅ」
「っ、……ちゅっ…」
息を吸おうと開いた唇の隙間から、熱い舌が入ってくる。
久々に間近で感じる太輔の香りと、温度に、くらくらする。
舌を絡めとられて、吸いつかれて、
互いの唇の隙間から漏れる熱い息とか、絡み合う舌がたてる水音とか、いろんなところから刺激されてたまらなくなる。
トントン、と太輔の胸を優しく叩くと、
ちゅっ、とかわいい音を立てて唇を啄まれ、
それを最後にゆっくりと唇が離れる。
そしてぎゅう、と抱きしめられる。
「…ずっとキスしたかった、」
「…朝しただろ」
「ひろはしたくなかったの?」
「お前その聞き方、ずるい」
「ちゃんと暗くなるまで我慢したじゃん、ほめて」
人が少ない海岸とは言えさすがに昼間は人がいた。
普段から人目を気にする俺を、太輔なりに気にかけてくれたんだろうとまた胸が熱くなった。
「んー、そうだな」
「もっとしたいけど家まで我慢する」
「なんで?」
「ひろのかわいい声が誰かに聞かれるのムカつくから」
ムスッとした顔の奥に悪い笑顔が見える。
太輔はきっとからかっている。
「はあ!?」
「ちょ、ひろ、声でかい」
「っっ、からかうなよ、」
慌てて口元を押さえて下を向く俺を、さっきよりも強く抱きしめる。
「からかってないよ?はやくひろとしたい」
ぐっと近づけられた耳元で優しく囁かれる言葉に、赤くなる顔を隠しきれなかった。
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しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時