蜃気楼*24 ページ24
*
「ひろさぁ、どうやって時間戻した?」
隣でもぐもぐとおにぎりを一生懸命頬張っているひろに尋ねた。
「言っても怒らない?」
「怒んない怒んない」
怒られるようなことなんだ…とは思ったけど、言わない。
「……テディベア燃やした」
「えっ!?なにそれひどい!」
心で思うよりも先に口が出てしまった。
さすがに、驚いた……
「なんでそんなことしたの!?せっかく俺が……」
「…太輔が、1人にならないようにって、思って、最初は。」
じわじわとちょっとした怒りのようなものが湧いてきて、少し早口でまくし立ててやろうと思ったのに……
これだよ。
胸がじん、と熱くなって、ついでに視界が少しだけ歪んだ。
「明け方の海で、俺の分身のほうを、燃やして、その灰を海に放った。そしたら、風が一気に吹いてきて、……」
じっと見つめる俺の視線に気づいたのか、海の方を見て話していたひろは俺に視線を移した。
「……そしたら、そこにお前の、影をみて、…なんていうのあれ、蜃気楼、じゃないけど、そんな感じの」
「……それで、お前の影を追いかけたら、お前は消えちゃうわけ。そんでそのあとよくわかんないまんま、ふわっと白くなって、今日の、…ちょうど今くらいの時間に、戻ってくる、的な?」
ひろの言葉に時計を確認すると、14:53だった。
きっと以前までの俺たちだったらどっちがコーヒーを買いに行くかもめていた頃だろう。
「…お前、自分が行くって俺の言うことなんて全然きいてくんねーし、困ったよ。」
俺を見つめたまま困ったように笑って眉毛を下げた。
俺はひろを守ろうとして、何回も同じことを繰り返した。
でもそれは、ひろも同じだった。
ぐっと胸の奥からこみ上げてくる熱で再び視界が歪む。
「…ちょ、なんだよ、泣くなよ」
「うっ……うぅ…」
ひろが慌てた様子で俺のことを抱きしめてくれた。
そんなひろにしがみついて、えぐえぐと子供のようにしゃくりあげて泣いた。
こんな奇妙で、恐ろしい体験の中に、ひろの愛をこんなに感じられるなんて思わなかった。
ひろが、俺と同じように、俺を守ろうとしてくれたのだと、俺のために命を、捨ててでも。
最後に俺を庇って死んだときの記憶は、ひろにはきっとない。
俺も、ひろを助けようとして、死んだときの記憶はないから。
だけどその記憶は、俺の胸に深く刻みつけられている。
*
289人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時