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蜃気楼*22 ページ22

*




3時半頃、目的の海に着いた。
ふたりで車を出て、どちらともなく砂浜に足を進める。

そのまま並んで砂の上に座った。




「……なぁ、」


「何?」



ぴた、とひろの頬に触れると、ゆっくりとこちらを向いた。



「ひろ、何回ここに来た?」




ひろの目が大きく開いた。
そしてそのあと、へな、と眉毛が下がって、きゅっと口角を持ち上げた。




「……これで3回。太輔は?」

「……俺も3回。」




滲んでいく視界で、ひろの顔がくしゃ、と歪む。
涙が見たくなくて、見られたくなくて、ぎゅっと抱きしめた。




「……おれ、2回も、しんだの」

「…そうだよ、でも、2回目にひろをころしたのは、俺」



きゅ、と服を引かれて、体を離せば唇がそっと触れた。



「……こう、だろ?ころしたとか言うなよ」

「くす、…なんでわかるの?」

「…しぬ時は、そうしてほしいって、思うから」




耳まで赤くしているひろがかわいくて今度は俺からキスをした。





「……かわいいやつ」

「うるせ、」

「しぬほどちゅーしてあげるからね」

「ば…っ!いいよ別に!」

「ふは、おうち帰ったらね」

「いいっつってんのに……」



恥ずかしそうに、でも嬉しそうに、ぼそりとつぶやいた。




「……お前も、わざわざ2回もしにやがって、」

「ごめんて、ひろを守りたかった」

「……グス、おれだって、守りたかった」




どちらからともなくぎゅうぎゅうと抱き合った。




しばらく時間が経って、朝陽が昇り始めた。
長かった夜が、闇が、ようやく明ける。


ふたりとも黙ったまま、じっと昇っていく朝陽を見つめていた。






*

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しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時

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