蜃気楼*12 ページ12
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立ち入り禁止のテープを乗り越えて中に入ろうとした俺を近くの警官が止めた。
とても冷静ではいられない頭で警官に掛け合うと、警官も俺のあまりの様子のおかしさに了承した。
しかし救急車には乗せてもらえなかった。
…太輔の容態はかなり危ういらしく俺が乗っている場合ではないらしかった。
最初に話を聞いてくれた警官が気を遣って代わりに俺を乗せて太輔の搬送先の病院まで連れて行ってくれた。
気が気ではない。どくり、どくり、と心臓の動きが体中に響く感覚に陥る。
事故現場まで走ったからではない汗をだらだらとかき始める。
俺は、何をしてるんだ、
太輔を守るつもりで一緒に出てきたのに、
罪悪感に支配されて思わず頭を抱えた。
病院に着いてもすぐに太輔のところへは連れて行ってもらえなかった。
集中治療室にいるらしい。
集中治療室から出てきた先生に話を聞けば、骨が複数本折れていて、出血もかなり多量だったそうだ。
今夜を超えられるかが、山場だ、なんて、
ドラマで聞いたことのありそうなセリフを言われた。
やっとの思いで太輔に会わせてもらえたが、
頭や腕に包帯を巻いて、人工呼吸器をつけて、とても痛々しかった。
ピッ、ピッ、と太輔の心臓の動きに合わせて機械の音が鳴っている。
ベッド脇のイスにかけて、太輔の手を握る。
何度が優しく握り直しても、太輔の手に力がこもることはない。
「太輔、お願い、目を覚まして……」
俺がそこに座って数時間経ち、既に日付は変わって、深夜2時頃だった。
急に太輔の心拍数が下がり始めた。
急いでナースコールを押すと、バタバタと看護師や医者が駆け込んできた。
何もできない俺は太輔のそばを離れて、医者や看護師の輪の外からその様子を見ていた。
医者たちが切羽詰まった表情で太輔に様々な処置を施すも、心拍数は上がらない。
太輔の顔を見つめる。
心拍数が下がり始めるまでは時折苦しそうにしていたその顔から、完全に力が抜けているような気がした。
何かを察したように心臓がうるさく騒ぎ始める。
気づきたくない、もう一度なんて受け入れられない、
じわりと視界が歪む。
少しずつ少しずつ電子音の間隔が長くなっていく。
やめて、お願いっ……
ピーーーーーーー…………
静かな病室に無機質な音が響く。
「っ、……たいすけっ………」
視界を歪めていた涙がぼろぼろとこぼれ始める。
また、守れなかった……………
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しょこら(プロフ) - Hina.Tamaさん» Hina.Tama様、お読みいただきありがとうございました!!そう言っていただけて嬉しいです。。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
Hina.Tama(プロフ) - しょこらさん初めまして。本編完結おめでとうございます!ハラハラドキドキな展開に毎日更新を楽しみにしていました。素敵なお話本当にありがとうございました!! (2018年7月27日 0時) (レス) id: ca7c7000b2 (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - 日美さん» 日美様、ありがとうございます!そのように言っていただけて本当に嬉しいです。゚(゚´ω`゚)゚。 (2018年7月27日 0時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
日美(プロフ) - 初コメ失礼します。更新お疲れさまでした。初めて更新されたときから毎回更新がとても楽しみな作品でした。とても大好きなお話です!また次のお話も楽しみにしています……!! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 86fe79ef6e (このIDを非表示/違反報告)
しょこら(プロフ) - askiiii...xxxさん» ありがとうございます!更新頑張りますのでよろしくお願いします!⊂*`∀´⊃ (2018年7月18日 10時) (レス) id: ef72d80421 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょこら | 作成日時:2018年7月13日 12時