紫の一匹狼 (ページ23)

今日:14 hit、昨日:26 hit、合計:38,222 hit

俺の特権ページ23

.

side：田中

ｽﾄ「おはようございます！」

振「おー」

　「あれ、あいつは？」

『いつもんとこいると思います』

振「あー、そっか今日…」

　「10分くらいに始めるからそれまでに樹、頼んだ」

『はいっ』

俺には特権があると思う。

こうやって振付師さんに任されるのも、杏子(きょうこ)さん(Aのマネージャーさん)に頼られんのもいつも俺だし。

お互い辛い時は支え合ってきたわけだし。

どうせまた飲まず食わずで練習してるんだろうから
冷蔵庫から水を、ポケットに忍ばせてた1口サイズのお菓子を持ってさっきと違うレッスン室に向かった。

扉をそっと開けると開脚しながらなにか考え込む様子のA。

バレないように、背中に近づかないように正面に回り込む。

「っ、めたっ、！！」

『よっ』

「…樹………心臓止まるから…」

『迎え来た』

「あー…もうそんな時間か、」

『ここ、あとこれ』

眉間にシワがよってることを指摘して、水とお菓子を渡すと眉間を指でぐりぐりしながらありがと、と素直に受け取られる。

あ、これも多分特権。

他のやつなら多分遠慮して受けとんないの笑

「今日レッスン後そのまま解散だっけ？」

『そー、あと今日迎えない日ね』

「あ、、忘れてた、、、」

Aはこの時間帯に帰る時、マネージャーの車で帰るか誰かと帰ることが決まっている。

この顔は多分誰とも約束してないって顔。

「…」

無言で見つめて様子を伺ってくるからなに？ってわざと聞いてみる。

「今日はピスタチオの気分」

『…は、？』

「…アイス、！……一緒買いに行こ、」

『…ふはっ笑』

元々Aはみんなに迷惑かかるから、って1人で帰りたいタイプ。

けどそうするとみんなが怒ることも告げ口されんのも知ってる。

だから多分素直に誘えなくてこんな言い方してるんだろうけど、正直ちっちゃい子みたいで。

『しゃーねーな』

「ちょっ、髪の毛ボサボサなる、！」

多分この顔を見れるのも俺だけだし、小さく呟かれたありがとうをわざと無視できるのも、結局ケースと睨めっこしてアイス2個食べちゃうとこが見れるのも俺だけ。

…これからも俺だけの特権、いっぱいつくらせて。