解放(前) ページ9
昨日見た和瑠子の背中。それが自分の妄想で、現実と妄想がごっちゃになっているだけなんじゃないか? と頭を抱えるA。
そんな彼女の背中を、暖かな太陽が照らす。
今は昼休み。初夏の蒸し暑い空気が、今日も続いている。
A(昨日、和瑠子ちゃんに、はっきり嫌だって言えた……。和瑠子ちゃんのあんなに悔しそうな顔、初めて見た。もしかして夢だったのかな。もうなんか、夢でもおかしくないぐらい)
そう思いながら、ぼんやりと人気のない廊下を歩くA。
その肩に、和瑠子の手が、優しく乗せられた。
和瑠子「……ねえ、A」
A「和瑠子ちゃんっ……!」
眉を吊り上げて怯えるA。その顔が、和瑠子の右手を見るなり、真っ青に染まった。
和瑠子の右手には、葵さんから貰った、スーパー☆カンチョーのステッキが握られていたのだ。
A「っ、それ!!」
和瑠子「これ、なあに? だっさぁ、ふふふっ! もしかしておもちゃぁ? 馬鹿みたい!」
ステッキの両端に手を当てて、ゆっくりとそのステッキを曲がらせて行く。
和瑠子「せぇ〜のっ、ぱきっ!」
ぴしっ、と、ステッキのどこかが割れる音。
その音が聞こえると、和瑠子はそのステッキを床に叩きつけた。
そして、踏みつける。
ーーキーホルダーを壊したあの時と、全く同じ目つきで。
Aの目に、みるみるうちに涙が溜まっていく。
あの日の苦い記憶が、蘇ってしまったのだ。
割れたキーホルダー、母親に買って貰った、思い出のキーホルダーの、見るも無惨なその姿。
……しかし、あの日の、キーホルダーを割られた日のAとは、何かが違った。
昨日の、和瑠子へ向けた反逆。あれが、彼女にとっての、吹っ切れるきっかけだったのだ。
A「……和瑠子ちゃん」
和瑠子「へ? なぁに?」
A「……確かに、あのステッキは、和瑠子ちゃんから見たら、ただのおもちゃに見えたかもしれない。学校に、おもちゃに見えるものを持ってきて、ごめんね」
A「でも、それを壊すのは、また別でしょ?」
和瑠子「はあ? いけ好きないやつの物壊して、何が悪いの? これは制裁よ?」
Aは眉間に皺を強く寄せてこう言った。
A「制裁なんかじゃない!! 貴方のしていることは、ただのいじめ!! 嫌いな人なら何をしても良いなんて、二度と思わないで!!」
***
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甘草リコ - こんな駄作者ですが、今後ともよろしくお願いいたします。10月より新作品を更新する予定ですので、気長に待っていただければと思います。よろしくお願いいたします。 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 95ef1aa62b (このIDを非表示/違反報告)
甘草リコ - 皆さん、大変申し訳ないのですが、パスワードを忘れてしまい更新不可となってしまいました。見てくださった方々には大変申し訳ございません。次こそ、皆さんに素晴らしい作品を届けられるよう頑張っていきたいと思います。 (2022年9月23日 1時) (レス) id: 95ef1aa62b (このIDを非表示/違反報告)
甘草リコ - むつさん» あああ!! 返信遅れてごめんなさい!! いじめっ子に浣腸……卒業するときにいつかやってやりたいと考えていまs((( ゆっくりやすみます。あと誤字の指摘ありがとうございます!!!!!! (2022年6月21日 21時) (レス) id: b10498da77 (このIDを非表示/違反報告)
むつ - はじめまして!作者さんをいじめる人なんて、浣腸s……((すみませんでした。主人公ちゃんみたいにかっこよく言い返したいなと思っても、現実ではなかなかできませんよね……。ゆっくり休んでください!あと、「心」が「葵」に変換されちゃってるかな?と思います! (2022年6月14日 19時) (レス) @page12 id: 7d80cfa994 (このIDを非表示/違反報告)
甘草リコ - なずなさん» なずなさん……! ありがとうございます。本当に嬉しいです。いじめは本当に消滅してほしいですよね。いつか帰ってきます!! 絶対!! 本当に見ていてくれてありがとうございました。 (2022年6月10日 22時) (レス) @page12 id: 95ef1aa62b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘草リコ | 作成日時:2022年5月3日 20時