No.iの救済策【シオン】 ページ7
あたしには一人、好きな人がいる。
煌びやかにキーブレードを振るい、流れる様な動作で敵を倒していくその姿。表情を変える事はあまりしないけれど、あたしが困っている時に、すぐに気付いて助けてくれるその優しさ。
その男の子はあたしの憧れで、その子を見るだけでも無い筈の心がドキドキしていた。
ある時、自分の事がどうしても知りたかった。
だから、アクセルの説得を背いてまで、忘却の城へと密かに入って行ったの。
___そこで知ってしまった自分の真実。
それは、今までのあたしの感情も、存在をも否定するものだった。
「……あたしの、Aへの気持ちは……本当は存在しないもの?」
目の前に映る文字の羅列を憮然として見つめ、声が出ているか分からないくらいに小さく呟く。
ロクサスの本体である[ソラ]の記憶から、あたしが出来ている。あたしの心が出来ている。
その事実に、止まりなく涙が溢れていった。
___それから少し経った時、不意にこの前の事を思い出した。
あの時は気が付かなかったけど、振り返ればもう一つ、あたしの事とは違うものが載っていた様に思えたの。
何だか、それはあたしの事以上に見逃しちゃいけないものな気がして。
そんな事で再び、あたしはあの場所へ行った。
そして、必死に探した末にそこで見たもの。
「……嘘……Aが?」
それは、あの子の秘密だった。
あの子はノーバディとは違う特別な存在。だから、機関に利用されているというその事実。とても悲しいと思える、現実がそこに記されていた。
それを見て、あたしが彼を[救いたい]と思ったのは何でだろう。
こんなにホッとするのは何でなんだろう?
「シ……シオン! お前何を……」
「Aは知らなくて良いんだよ」
あたしが救うんだ、この子を。
機関に利用される憐れな彼を、あたしを、ここから救うんだ。
何も知らせないまま、その存在を消すの。
だから、たった一回だけ一緒にアイスを食べた、いつもの時計台の上で、Aをキーブレードで刺した。
そして、ふらついた彼をあたしは強く抱きしめる。
『シ、オン……!』
「好きだよ、A。
ずーっと一緒にいようね」
そして、あの子を抱き締めたまま、
あたしはそこから真っ逆さまに落ちて行った。
……これはあたしの心だ。記憶なんかじゃ無い。
だって、あたしは君をこんなに想ってる____
変わらないその子と俺【シグバール】 (リクエスト) ネタバレ注意→←全てを手に入れるまで【ルクソード】(リクエスト)
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時