___終わり ページ50
「いや、俺が代わる。
Aはこっちを使ってくれ」
彼女を引き寄せた張本人であるゼアノートは、そう言っては黒い駒を摘み上げる。
そして不敵に笑ったゼアノートに、エラクゥスは苦虫を噛み潰したような表情をした。
「Aには白が似合うんだ!」
「黒こそAの魅力が引き立つ」
そのまま、成れ行きで言い合いへと発展していく。
普段あまり見る事のない二人に圧倒されたAは、恐る恐ると言った様子で声を掛けた。
「ねぇ、一体何の話をしているの?
まるでチェスの事じゃないみたい」
不安を湛えて問いかけるAに、両者の言い合いは途端に鎮まる。暫く無言の時が流れた末に、二人はこちらを向いた。
笑みを見せるエラクゥスと、表情を無くすゼアノート。
二人の顔はどこか陰鬱で。いつもとは異なるその表情にAの背筋はゾクリと震える。
されどそれは、瞬きと変わらない程に短い時間だった。
「何の話って……チェスに決まってるだろ?」
「Aは強いしなー。こっち側になってくれれば嬉しいんだけど」
気が付けば、普段通りの二人がAに問いを返す。何事も無い様子を見せる二人に、鳴っていた鼓動は徐々に収まり、彼女は安心したように軽く溜息を吐いた。
「まだ終わってないんでしょう? だったら、この試合で負けた方と代わるよ。
さあさあ、頑張れ頑張れ〜!」
先程の気分を払拭する為に、Aは背中を押すようにして促す。
「じゃ、それでいいや」
「これ以上言い合ったって仕方がないしな」
先程とは違って素直に従った二人に、「なんだったんだろう」と、首を傾げたAであった。
「___光こそ、あの子のいるべき場所であり、絶対に覆ってはならないもの。
何に変えても俺がずーっと守るからさ、どうか側に居続けてくれ」
「___闇こそ、あの子に必要なものであり、無ければこのまま存在を保ってはいられない。
お前の為なら幾らだって闇に染まってやる。だから、こちらに堕ちてくれ」
それぞれに抱えている彼らの思惑で、全ては歪み始めていたのだった。
○*・・*○○*・・*○
この短編集はこれにてお終いです。これまでのご閲覧、誠に有難うございました。
自身もこのような短編集を作成する事が無いので、何か至らぬ点が多々あったと存じますが、それでも読んで頂けた皆様には感謝してもしきれません。
もしかしたら、他の作品にてお会いできるかもしれません。その時はよろしくお願致しますね。
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時