選択肢【ヤングゼアノート】(リクエスト) ページ47
眦に薄っすらと赤い跡を残すその子の、少々乱れていた髪を梳く。
精一杯抵抗し、精一杯泣き叫んだ。
そして、Aは心と身体の疲労困憊によって、糸がプツンと切れたかの様に眠っていた。
「無駄だというのに……何故諦めない」
それは、望みが叶えられ、充足した幸福感を得られた今も唯一腑に落ちない事。
俺はその子の頰に触れる。指を這わすように唇から続いて首筋、鎖骨、胸郭から腹部……と、徐に手を下げていく。
そして最後に当たったのは、その子の小さな手だった。
「……いい加減やり方を変えた方がいいな」
掌を掬い上げては、それに合わせて鳴るジャラリとした重い金属音。
いつもの通り、Aの色白な腕には、擦り傷や赤い痣が色濃く残っている。
傷付いた原因であろうその真っ黒な手枷は、まるで何事も無い様にその子の自由を奪い続けていた。
「闇の力でお前を操ることは容易。しかし、穢れのない光を曇らせるのも何だか気にくわない。
……さて、如何したものか」
独り言を呟いては、持ち上げたそれをそっと降ろして、再びその子の髪を梳き始める。
「んぅ……」
すると、何かに反応したのか、Aは身をよじらせてはこちらに擦り寄ってきた。垣間見えるその寝顔は、先程まで涙が頬を濡らしていたとは思えない程呑気なものだ。
あどけない表情とは裏腹に、傷だらけの足首と手首。因みに俺は危害を加えてはいない。
つまりは、壁から鎖を経て、繋がれた手枷と足枷を外そうと躍起になった結果だろう。
「もしここから抜け出そうものなら、二度と歩けない足にするのも良いだろうな」
いや、寧ろそちらの方が合理的なのかもしれない。
その子を見つめ、そこまで考えていたところで、ふとある発想が思い浮かんだ。
「それなら選ばせてしまおう。
このまま大人しく留まるか、抵抗して足を無くすか」
どちらにせよ、俺にとって都合の良い方に転ぶ事は間違いない。
前者を選べば、Aはこれ以上自身を傷付ける事はしない上、とても扱い易くなる。
後者を選べば、逃げ出す心配の必要が無くなる。それに、さぞかし美しいであろうその子の苦痛に満ちた表情を観れるだろう。
この二つしかない選択肢は俺からしては非常に選び難い。だから自分で決めて貰う。
「ああ……楽しみだな。
事の顛末は一体どちらに行ってしまうのか」
Aの前髪をかき上げ、その額にキスを残す。
それでいて、純粋なままのその表情に、自然と口角が吊り上がっていた。
拒絶【テラ】(リクエスト)→←痛みを治して【ゼクシオン】(リクエスト)
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時