愛は狂気なり【サイクス】 ページ16
俺にはノーバディになる前から、ずっと好きだった子がいる。
一度しか会った事がない、柔軟な笑みを浮かべる優しい女の子。その出会いは本当に偶然だった。
ある時、重症で広場に倒れていたその子を見つけた。その端整な顔を苦痛に歪めた女の子。
こんな事を思うのもなんだが、その姿が今迄に見た何よりも美しいと無意識に思ってしまった……要するに一目惚れだな。
それから、その子とは話をして友達になれた。
しかし、その子は誰かを探すと言って何処かに消えていく。俺もリアも、必死になって捜したが到頭その子が見つかる事は無かった。
それから今迄……10年は経過した。
今でも、その子への想いが途切れる事は無い。寧ろ、段々と重くなっていく一方だ。
その子への愛が、狂気に変換されて。
挙句の果てに、やり場の無いその想いは見境なく全てを壊す力へと変わってしまった。
「……No.XV A」
目の前にフードを被って俯いている新たな機関員。それがそいつの名前。
___No.iに次いだ、異例な存在の少女だった。
ここに来たばかりなので、呆けてまだ動く事も、話す事もしないA。
「フードを外したらどうだ」
動かずにじっと俯くそいつに少し苛立ちを覚えた俺は、どうでも良い事だが何となくそう言った。
すると、ピクッと肩を揺らしたAはこちらを向くと、ゆっくりとフードを外す___
「……なッ……!?」
「……? 外したぞ」
現れたその面持ちを見て、その声を聞いて……俺は息が止まりそうになった。
あの時の柔らかい雰囲気が無くなって、物静かで堅い印象を受けるその少女。でも、その子は確かに、俺の愛した子だった。
___やっと見つけた。
そう思えたその瞬間、何か抑えがたい衝動が全身から湧く様な感覚がした。
それは今までと同じ、愛という感情が変換された力。
「……ッ!? うぐっ……!!」
「俺が……どんなに待ち焦がれていたか……!」
その子を力任せに地面に倒すと、その子は背中を打ったのか呻き声をあげる。
あの時の様な、苦しげな表情を浮かべる。
それが何よりも実感が出来て、無い筈の心がゾクゾクと疼いた気がした。
「や、やだ……っ!」
痛みで碌に動けないその子に跨り、逃げる事が出来ない様にする。それでも抵抗するので、噛み付く様にキスをした。
……A
「この力を全て感情に戻して……幾らでも愛してやるからな」
さあ、受け取れ___溜めに溜まったお前への愛を。
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時