俺の隣で笑っていて【ソラ】 ページ1
いつからだろう。
何をしてでもあの子の光を守りたいと思ったのは。あの子の笑顔を守りたいと思ったのは。
「ソラ!」
Aが俺の名前をその笑顔で呼んでくれる度に、心の奥底で何かが解ける感覚がするんだ。
何かが…枷を外すかのように。
重苦しいそれは、あの子の笑顔を求めて動き出す。
「痛っ!
もー!何でキミ達は人を傷付けるの!」
ある日、共にキーブレードを振っていたAが、頬を膨らませながらもコツコツとハートレスを小突いていた。Aの腕に映える赤は、それの攻撃を食らった時に出来た引っ掻き傷。
……前の俺なら、心配するくらいで済んだのに。
何だかぼーっとしてきた頭で、俺はそんな事を考えていた。
「___ソ、ソラ! ねえ、ソラッ! 」
「……! 何だ?A」
気がついたら、あの子が俺の身体を揺さぶっていた。
俺はなぜか息が切れていて、キーブレードを握る手は異様に熱くなっている。
「何だ、じゃなくて!
……ど、どうしていきなり、怖い顔してハートレスを倒したの? 何度も叩いて……」
___ああ、そういうことか。
さっきいたハートレスがいないという事は、きっと滅多打ちにして倒したから。そう、何かの衝動に駆られて、何度も何度も何度もキーブレードを振り下ろしたんだ。
Aが知らなかっただけで、それはいつものことだった。
「ハートレスは敵だろ?」
「そうだけど……!」
俺の服の裾を掴んで言うAの頰に触れると、ビクリと肩を揺らしながらも、まっすぐとこちらを向くその瞳。
その子の瞳は不安に揺れていた。
何でだろう。笑顔を奪った原因は消したのに、何で笑ってくれないんだ。
「A、笑ってくれ」
「……え?」
頰に手を添えては溢した言葉に、その子はキョトンとした表情を浮かべる。
何にもわかってない。だけど、それでこそ愛しく思えるAに、俺はニッとはにかんだ。
「俺はAが楽しく笑ってる時が一番好きなんだ。
Aの笑顔を隠す奴からは俺が絶対に守るよ。
だから、そこでずっと笑っていてくれ」
君の笑顔を奪う原因は全部消すよ。
例え、それが俺の身近にいる人達でも。
その言葉は、二人の息遣いだけが聞こえる静かな世界で、鮮明に響いた。
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時