26 ページ26
・
講習のあと、
ふたりでなんとなく離れながら、校門をくぐる
「A、こっち。」
「うん、」
廉が、こっそりと私に手招きし、
人通りの少ない道へと、連れて行ってくれた
駅まで、なるべくゆっくり、進める歩調
「………そろそろ大丈夫やって、顔上げて？」
しばらく行った先、うつむいていた私に廉が優しく言う
そっと上げてみた視線が、君へと注がれた
その瞬間、ぱちりと心の奥で何かが弾けて。
鼻の奥がつんとした。
突然、泣きたくなってしまったんだ
この冷たい世界に、私の置かれた不公平な環境に、
どうにもならない、この気持ちに。
「A、平気？どしたん、」
私の顔を覗き込む君の視線
それから逃れるようにまたうつむく私
好きなのに。こんなに好きなのに。
窮屈で、少しも一緒にいることを許されなくて
これって、全部私のせいなの？
私が、嫌われてるせい？
「A？なぁ、ほんまに、」
「廉には、わかんないよね。」
はじめてそっと、肩に触れた君の指先
その少しの重さを受け止めながら溢れた言葉は、
想いと裏腹に、きつく、鋭かった
違う、廉は何も悪くない。
「廉みたいに友達もいて、人望もあって、」
「A、」
「なんでも持ってる人には、私の気持ちなんてわかるわけない」
君の息が、止まる
心が、気持ちが、振り出しに戻る
廉に対する羨望と
そばにいたいという欲望が、入り混じる
「………私だって。私だって廉と、」
もう、止まれない。
君の瞳が、揺れている。
「………廉と、一緒に居たいよ。」
「廉と話したい、」
「あの子が羨ましい、」
「あの子みたいに、私も廉の幼馴染だったら、」
「もしそうだったら廉と、」
「もっと違う関係に、なれてたのかな？」
溢れて止まらない気持ちに、
私たちはいつのまにか、足を止めていた
「………それならもっと、」
「もっと早く。あの子よりも早く、」
「廉と、出会いたかった。」
私たちの間を、熱い夏の風が吹き抜けていく
荒い息を整えて、こぼれそうな涙をぐっと堪えて、
ふと、見上げた先の君は、
まだ瞳を、揺らしたまま。
その唇が、ゆっくりと動く
「………A、もしかして俺のこと、」
ああ、あの時やめておけばよかったのに
もう、戻れないところまで来てしまっていた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1013人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - zzzさん» zzzさんいつもありがとうございます。今回もお付き合いいただきありがとうございました！ぜひ何回でも読んでみてください！また次回もどうぞよろしくお願いいたします。 (2022年1月25日 10時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんばんは。「Rewind」0章 ついに完結で、またはじめから読みたくなってます。次回はどんな作品と出会えるのか、楽しみにしてますね。 (2022年1月24日 19時) (レス) @page32 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - zzzさん» ZZZさん。いつもありがとうございます！また読み直してみるといろいろと見えてくるものがあったりするかもしれません。ぜひ、お話は逃げないので忙しくない時に読みにいらしてくださいね！今年は大変お世話になりました。良いお年をお迎えください！ (2021年12月31日 23時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - ZZZです。過去編をみて切なくなってる私です。そっか、こんな寂しさを抱えていたなんて…。も少し先まで読んでから読み直すか！今すぐみるか‼️年末年始の料理はじめるか？真剣に悩んでます。 (2021年12月29日 12時) (レス) @page11 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - さやさん» はじめまして！コメントありがとうございます。楽しみにしてくださっていたなんてとても嬉しいです！ゆっくりですがきちんと進めていきますので、どうぞよろしければ最後までお付き合いくださいね。ありがとうございます^^ (2021年12月22日 19時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2021年12月18日 16時
