37 ページ37
・
結局私は、頭痛の話を医者にできなかった。
最初から、廉さんに会うとなんとなく頭が痛くなることがわかっていたし、
それを、医者の方もきっと知っているような気がしていたから。
だけど、そうやって反抗と秘密を積み重ねることで、
私たちは確実に、自分たちの首を絞めていた。
・
その日も私は、痛む頭をどうにか持ち上げて、
廉さんと約束した、中庭へと向かった
「廉さん、お待たせしました」
「待ってたよ、Aさん」
目が合えば、微笑む
微笑めば、幸せが広がる
となりに腰を下ろし、どちらからともなく手を繋ぎ
ゆっくりと言葉を交わして、
今日もきっと、このままいつも通り、ふたりの時間を過ごせる
そう、思っていた。
だけど、
「ごめん、ちょっとヤバいかも、」
「廉さん、どうしたんですか、」
一瞬重なった視線
廉さんの顔がぐにゃりと歪み、苦しそうに頭を押さえるその細い指
「……廉さん？廉さん？！」
廉さんが、いつかのように椅子から崩れ落ちていく
地面に倒れないように慌てて支えるけれど、私の力ではどうしようもない
「廉さん待っててください、今お医者さんを、」
「、やめろ、」
「え？」
しっかり握りしめた君の手のひらに、力が入る
弱々しく、だけどはっきり発された言葉
「医者は、呼ぶな、」
「だって呼ばないと、廉さんが、」
「平気、平気やから。頼むから離れんといて、」
その言葉が、がしりと私の心を掴もうとしてくる
だけど額には汗が光り、苦しそうな君を見ていられなくて
「廉さん、呼ばせてください、お医者さん」
「あかん、今呼んだら、俺らもう会えなくなるやろ、」
「、でも廉さんが！」
「行くなよ、頼む、」
地面に半分横たわったまま、
廉さんが強く、私の手を握りしめる
その力に、自分の無力さに、思わず涙が溢れた
すると急に、君の手から力が抜ける
「……、った、」
「、廉さん？、廉さん！！」
最後にぎゅっと眉間にシワを寄せ、
その手がぱたりと、地面に落ちた
「廉さん！！起きてください、ねえ！！」
私の手から消えていく温もり
離れていく、心と体温
あれ、この感覚、前もどこかで、
あの日、私が目を覚ます直前に、
ぼんやりと見ていた、夢が、
「………あれは、」
その瞬間、私の頭に激痛が走り、
目をぎゅっと閉じれば
世界が、真っ暗になった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 817人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「King&Prince」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - zzzさん» こんばんは！お久しぶりです！また読んでいただけて嬉しいですありがとうございます^^ 少しずつですがお話をまだまだ書いていますので、楽しんでいただけたら幸いです。こちらこそいつもありがとうございます！ (2021年10月30日 23時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんばんは。大変ご無沙汰しておりましたが、詩愛さんの作品の香りを嗅ぎ付けてやって来てしまいました( ￣▽￣)まずは第一章お疲れさまでした。これから先の展開もドキドキさせていただきますね。いつもありがとう。 (2021年10月29日 19時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひだかくんさん» いつもありがとうございます！いろいろ気になることがたくさんありますよね……ぜひ今後の展開にも期待してくださいね。ありがとうございます、無理せず更新いたします！ (2021年8月4日 23時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひだかくん(プロフ) - 高評価が一回しか押せないのがすごく悔しいです(ToT)廉君と主人公ちゃんがこれからどうなっていくのかなとか、きちんと思い出せるのかなとかめっちゃ気になります笑 作者さんも無理のないようにしてくださいね！ (2021年8月3日 23時) (レス) id: 10f3d7dc91 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ミツキさん» ありがとうございます！まだまだ先は長いので、今後もどうぞよろしくお願いいたします！ (2021年7月26日 15時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2021年7月24日 16時
