24 ページ24
・
そこからまた数日間、廉さんに会えない日が続く
廉さんの病室の前で医者と話したあとは、
関わるな、と、直接大人たちから言われたわけではなかったけれど、
無言の圧力というものを、私はひしひしと感じていた
廉さんに、どうして会ったらいけないんだろう。
ちゃんとした理由も説明されないままで、
私の心には、もやもやした気持ちが立ち込めていた
・
そんな日々に嫌気がさしたある日、
もしかしたら、廉さんに会えるかもしれない
そう思った私は、こっそりとひとり、中庭へ向かった
緑が目に染みて、熱い空気が私を包む
久しぶりに訪れた中庭のベンチ、そこには、
「……お、ほんまに来た」
廉さんが、座って私を待っていた。
「なんか今日あたり会えへんかなって思って待ってたんですけど、まさかマジで会えるとはね」
「……会えて良かったです、お待たせしました、」
「ふはは、やっぱおもろいわ、Aさんて」
こそこそ周りを気にしながら、
私は廉さんのとなりに、腰を下ろす
久しぶりで、嬉しくて。
だけどなんだか、気まずい沈黙が流れていく
「……この前は、心配かけてすんませんでした」
「いえ、平気です、もう大丈夫なんですか？」
突然口を開いた廉さんに、慌てて返事をした
彼の表情は、明るくない
「大丈夫です。ただ俺、医者に言われたんですよね、あんま他の患者と関わるな、って」
「……それ、私も言われました、」
「え、ガチっすか？」
頷いた私と、君の目が合う
少しの後ろめたさ。だけどどうしても、一緒にいたい。
「なんやろ、なんか。他の患者っていうか、Aさんと関わるなって、言われてる気がしました」
「うん、私も、」
「……なんで関わっちゃダメなんすかね。俺ら」
わからない。私たちには、何も。
ぷつりと途切れた会話、ふたりの間に風が吹く
「………やっと、話せる人見つけたんやけどなぁ。なんでなんやろ、マジで」
しばらくの沈黙の後、廉さんが小さな声で呟いた
その表情が、痛くて。
「……廉さんには、友達とかいないんですか、」
思わず、そんな質問をしてしまう
すると彼は、ひっそりと冷えた視線を私に向け、
「………いないよ、友達。」
と、囁いて、儚く私に微笑んだ。
記憶の戻らない頭が、痛む
彼のその寂しそうな表情を、一生忘れられないと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 817人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
詩愛(プロフ) - zzzさん» こんばんは！お久しぶりです！また読んでいただけて嬉しいですありがとうございます^^ 少しずつですがお話をまだまだ書いていますので、楽しんでいただけたら幸いです。こちらこそいつもありがとうございます！ (2021年10月30日 23時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんばんは。大変ご無沙汰しておりましたが、詩愛さんの作品の香りを嗅ぎ付けてやって来てしまいました( ￣▽￣)まずは第一章お疲れさまでした。これから先の展開もドキドキさせていただきますね。いつもありがとう。 (2021年10月29日 19時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひだかくんさん» いつもありがとうございます！いろいろ気になることがたくさんありますよね……ぜひ今後の展開にも期待してくださいね。ありがとうございます、無理せず更新いたします！ (2021年8月4日 23時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひだかくん(プロフ) - 高評価が一回しか押せないのがすごく悔しいです(ToT)廉君と主人公ちゃんがこれからどうなっていくのかなとか、きちんと思い出せるのかなとかめっちゃ気になります笑 作者さんも無理のないようにしてくださいね！ (2021年8月3日 23時) (レス) id: 10f3d7dc91 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ミツキさん» ありがとうございます！まだまだ先は長いので、今後もどうぞよろしくお願いいたします！ (2021年7月26日 15時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：詩愛
| 作成日時：2021年7月24日 16時
