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このギターにも、私たちの忘れられない記憶がある
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高校の頃のある日、いつものように教室移動の施錠をするために、私たちは教室に残った
「……じゃあ、閉めるね」
「よろしく」
2人で廊下に出て、私が鍵を閉める
「今日、時間ぎりぎりだね。急がないと」
そう言って歩き出した私の後を追いながら、君が、
「……ねえ、Aちゃん、」
小さな声で、私を呼んだ
「ん？」
振り返った私と、ばっちりと目を合わせる神宮寺くん
それだけで、私の鼓動は速くなるの。
「今日、放課後。時間、ないかな」
君は目をそらさずに、落ち着いた空気で私を誘う
「ちょっと、相談があるんだ」
相談。
ちょっぴり真剣な表情で放たれたその言葉に、少しの緊張が体に走った
「………あ、もしかして、予定とかあった？」
少し残念そうに聴く君の、相談が何かわからなくて
もし、恋愛相談だったらどうしよう。とか、
嫌な考えが頭を支配する
「………Aちゃん？おーい」
「あ、ごめん、」
思わずぼーっとしていた私の目の前で、手を振る神宮寺くん
「……どうかな。今日の放課後」
君は相変わらず私をまっすぐに見つめる
どんな相談かわからない。
場合によっては傷つくかもしれない。
だけど私は、
まっすぐなその視線に貫かれて、
2人で、放課後を過ごしたい。と、思ってしまった
「………放課後、何もないよ」
そう伝えるとすぐに、ほっとしたような顔の君
「まじか。よかった」
一体、何の相談だろう
まだぐるぐると悩む私に、
「じゃあ、放課後！音楽室、来て」
神宮寺くんは明るく、場所を告げた
「教室、じゃなくて？」
首を傾げた私に対して、君は首を横に振る
「だーめ。音楽室がいい。」
そこまでこだわる理由が、まだ私にはわからなかったけど、
「……いいよ、どこでも」
君と2人で、居られるなら。
「やっぱり、あそこじゃないとだめなんだよね。ありがと」
にこっと音がしそうなくらいの眩しい笑顔を私に向けて、
「あ、時間やばい。急ご？」
さりげなく、私の背中を押す神宮寺くん
背中から伝わる少しの温度に心拍数を上げながら、早歩きで駆け抜けた廊下
放課後、何の話を聴かされるのか
小さな不安が、私の心の奥でくすぶった。
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作者名：詩愛
| 作成日時：2020年2月19日 15時
