beg.80 / 無 涙 -ムルイ- −A ページ37
「何度も何度も警察と会ったけど
結局この何十年、容疑者すら浮かんでこない。
正直、犯人なんていいんだよ。
毎回毎回当時のこと思い出して話すの、しんどいの。
面倒くさい。
あの血の海思い出すの気味悪いし
殺されたあいつらが悪い」
松潤でも、潤ちゃんでも無くなったかのような
そう思わせるような、
薄情ぶり。
殺された親を偲ぶなんて以ての外。
殺された親が悪いとまで言い切る。
人としてどうなんだ、とか
本当は言わなきゃいけないような言葉は
どこかへ置いてきたように浮かばない。
“ 要らないモノを捨てて、楽な道を選んだ ”
彼は最後に、親のことをそう言い
締めくくった。
何処からか、生温い風が運ばれてくる。
温めてもらうには熱が足りなくて
冷ましてもらうには熱が多い。
どうしようもない。
「…軽蔑したでしょ」
「…っ、そんなこと…」
「……言ったでしょ？」
「え？」
「後悔するよ、…って」
そんなことない、と
首を横に振るだけの俺らに
一言放った彼。
その視線は、ニノに向いていた。
「…してない」
「嘘つくなよ、」
「嘘じゃないよ。
変わらないよ。何も変わらない。
ちょっと人と違うからって、
そんなので俺らの態度は変わらない」
ニノが、言い切った。
それに怪訝な表情をした松潤は
順に、リーダーと翔ちゃんと俺の表情を伺う。
ニノの勇気を無駄にしない為にも
俺らもちゃんと彼の瞳を見つめ返す。
でも、それでも。
「…無理に合わせなくて、いいのに」
「無理じゃ…」
「俺を受け入れれば、アイツのことも受け入れなきゃいけないんだよ。
それが出来る？
どうしても被っちゃうような人を
区別して接すること出来ないでしょう」
「で、きる…よ」
全てを見透かされてるような
そんな口調。
いや、きっと
全てを見透かしてるんだ。
だから彼は
今リーダーが言葉に詰まったのを見逃さなかった。
「ねぇ」
仕切り直すようにそう言い
俺らの視線を集める。
ひとりひとり合わせられる視線に
俺らは、耐えなきゃいけない。
「騙せるなら、現実なんて要らないんだよ」
堕とされたその言葉は
心から受け入れなくとも
仲間のフリは出来る、と
そのことを表しているんだと
俺は理解した。
合ってる？
それとも、違う意味かな。
ねぇ。
キミは今、何を考えてる？
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - ともさん» 読んでいただきありがとうございます！黒くて闇が深くて、キレイなだけじゃないお話ですが、そこから何かを感じ取っていただけていたらうれしいです´`*。楽しんでいただけてよかったです(*^^*) (2021年3月14日 13時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - とてもミステリアスな作品で簡単に「凄い」と一言で言い表せない。ただ純粋で優しい相葉ちゃんを騙してた？と思うと心が痛い(>_<)闇が深すぎて…理解し難い事だけど〜面白かったです。 (2021年3月14日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
ヲ伽 -otogi- (元つむぐ)(プロフ) - なるちゃんさん» コメントありがとうございます(；；)！描写や人の複雑さが伝わったのはすごく嬉しいです(；；)感想ありがとうございました！これからもよろしくお願いします(*^^*) (2019年8月27日 20時) (レス) id: cfd42291d9 (このIDを非表示/違反報告)
なるちゃん(プロフ) - うーむ、すごい作品に出会いました。人物の描写がまるで映像を見ているかのようです。カッターナイフのシーンは泣けました。人ってなんて複雑にできているのでしょうね。ありがとうございました！ (2019年8月24日 0時) (レス) id: f390aacf74 (このIDを非表示/違反報告)
ヲ伽 -otogi- (元つむぐ)(プロフ) - Smilepug0923さん» コメントありがとうございます！嘘を咲かせてから( °_° )ファンだなんて嬉しいです(；；)辻褄が合っていると言って頂き安心出来ました！( 笑 )半年間、ありがとうございました！どうぞこれからもよろしくお願いします(*^^*) (2019年8月22日 18時) (レス) id: cfd42291d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽 -otogi- (元つむぐ)
| 作成日時：2019年6月1日 20時
