乞ウモリ (ページ9)

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beg.8 / 泉－J ページ9

今朝、目が覚めた瞬間から
ドンドンと、頭の中がライブ状態だった。

【ごめん、昨日飲みすぎた】

書かれてあったこのメモで
考えるより先に名前が脳内に浮かぶ。

所謂、二日酔いってやつだ。

その名前が脳内に弾き出された瞬間、
脳内ライブは締めの最大級の盛り上がりだった。

マネージャーの迎えが迫っていたので、急いで準備して家を出て。

車に乗ると、二日酔いには鬼畜なガンガンの音楽が流れていて
マネージャーに頼んで音楽を止めてもらった。

「もう、二日酔いなんて…新人じゃないんですから、気を付けて下さいよ」なんて言われながら。

再び怒りが湧く心に、必死に抑制をかけた。

まだ誰もいない楽屋について、
ソファに座ってテーブルに肘をつき、頭を抱える。

痛い。
脳内ライブはまだ終わらない。

なんだよ、終盤だったくせに
アンコールか？

そんな文句をつけながら
チラリと、横の鏡を見る。

─── ごめんね? ───

そう謝ってきたジブンに

謝って済むなら警察いらねぇ、と
心の中でありきたりのツッコミをいれる。

「ほんとにもう、勘弁してくれ…」

─── …ごめんね? ───

なんだそれ、そのセリフ二度目でしょ。

そんな思いのままに、そのジブンを睨んだけれど
呆れて、視線を逸らそうとした瞬間

また、そいつの瞳の奥深いところが
嘲笑(わら)った気がした。

それだけじゃない。

今度は、口元も
僅かに緩んだ気がして。

「………おまえ─────」

まさかと思って、
体を起こして鏡に正面から向かってそう呟いたとき

ガチャ、と扉の開く音がした。

「おはよう」

「あ…翔くん、おはよ」

「なに松潤、二日酔い？」

「ん、まぁ…、昨日飲みすぎた」

今朝、紙に書いてあったことをそのまま話す。

「寝てなよ」と言ってくれた彼の言葉に甘えて、
座っていたソファに横になる。

こんなはずじゃなかった。

二日酔いなんて。

どんな顔してるんだろう。

酷い顔なのかな。

それとも、そんな分かんないのかな。

嗚呼…、不便だな、本当に。

.

「…、」

体が浮く感覚がして

ふと目を開けると

楽屋には、もうみんな揃ってた。

「あ、松潤起きた？二日酔い大丈夫？」

「ん、まぁ…なんとか」

ソファの傍に座ってた相葉くんが

横になったままの俺を覗き込みながら尋ねてくれて。

さっきよりはマシになった頭に手をやりながら、
体を起こした。