beg.25 / 赤は漆黒に染める −A ページ26
握る彼の腕が
フルフルと震え、
その振動が、俺の腕にも伝わってくる。
「……っに、…れ、
………なにっ、これ…っ」
ユラユラ、なんて可愛らしいものじゃなく
ガタガタ、と言った方が正しいと思う。
彼の瞳が
異常な程、震えていた。
嗚呼、ほら。
また、彼の記憶が無い───────…
「……っ」
目の前の彼が
2週間前とリンクする。
弱々しい彼を
勢いに任せて抱き締めた。
マネージャーもスタッフも居なくてよかった、と思いながら
念の為、手探りで扉の鍵を閉めた。
「……ぃば、く…っ」
抱き締めたまま背中を摩っていると
腕の中で、彼がそう呟いた。
まだだと思った。
“ 苦しい ” と言わない彼は
まだ、心の内を話してくれる訳じゃない、と。
でも、それでもいいと思える。
無理に話させることは、
弱っている彼を攻めることになるから。
俺を頼ってくれるなら、それだけで。
「大丈夫。…大丈夫だから」
彼が俺の名前を呟く声と
弱った様子に、胸が痛くなって
もう一度、更に強く抱き締め直した。
「……っめん、…ごめ…っ」
「いいからもう話すな…」
「ちがっ…、」
フルフルと首を横に振る彼を不思議に思って
少し体を離すと、
彼が苦しそうに顔を歪めていた。
「ちょっ…、心臓？」
コクコクと頷く彼に
心臓の痛みは、メンタル面も関係しているのかも、
と思った。
苦しむ彼を放っていけないし
でも、薬を取りに行ってあげたい。
彼の背中を擦りながら、
どうしようかと悩んでいると
戻って来ない俺らを気にして、
ノックして翔ちゃんが声をかけてくれた。
急いで鍵を開けて、薬を頼む。
鍵を開ける前に、彼の手首を服で隠してから。
「相葉くん、これっ」
「ありがと。松潤？ほら、薬だよ」
彼に薬と水を手渡すと、
すぐに体内へ放り込んだ。
すぐには効かず、呼吸が荒い松潤。
未だ、俺の服の袖を
強く掴んでいた。
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作者名：つむぐ
| 作成日時：2019年3月26日 2時
