乞ウモリ (ページ2)

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beg.1 / 映るのは－J ページ2

もし、

目の前にいる人間に

今貴方に見えているのは誰か、と

問うことがおかしくなければ

俺は尋ねるだろうか。

チャンスがきた、と意気揚々とするのか

はたまた、やはり怖気付いてしまうのか

どちらだろうか。

まぁ、そんな現実味のないことを考えても

それが現実にならなければ分からない。

なんだってそうだ。

もしものことを考えても

実際それに出くわさなければ、分からない。

「─────…っくん、潤くん！」

「うぉっ、え？なに？」

「ずっと呼んでるのに」

「あ、ごめん」

「具合悪いの？」なんて聞かれるほど

ボーッとしてたみたいで

その原因は、きっと

さっき、チラリと見た鏡に

ジブンが映ったからだろう。

「ほんと大丈夫。ちょっとボーッとしてた」

「ならいいけど…」

「で、なんか用だった？」

「あ、メイクだって。なんか1人ずつじゃなくてみんなで来てくれって」

いつもは1人ずつメイクするのに。

珍しいな。

そんなこと思いながら、各々がやってることを止めて立ち上がり、楽屋を出る準備をする。

わけわかんないこと考えるのやめて、俺も集中しようと思い立ち上がったとき

ドクン、と体の中心が波打った。

「…っ」

せっかく立ち上がったのに、体は無意識にソファへと戻される。

体の真ん中を、服の上からガシッと強く掴み

大人しくしててくれ、とそれに唱える。

けれど、全く治まりやしない。

「ちょっ…、松潤、大丈夫？」

「おい、心臓か？薬飲む？」

それに気付いたリーダーと翔くんが、

慌てて駆け寄ってきてくれて

リーダーが背中を摩り、翔くんは俺の鞄を持って来てくれる。

相葉くんとニノも、心配そうに傍に居てくれて。

嗚呼、ほら。

こうなっちゃうから。

「…はぁ、はぁ、…ふぅ」

無造作に鞄を漁り、薬の箱を取り出し

薬を口に放り込み、水を流し込む。

徐々に落ち着いてくるそれに、

心の荒波が静まってゆく。

「…潤くん、大丈夫？」

「ん…ごめん、ありがと」

「収録大丈夫？」

「うん、大丈夫」

心配してくれるみんなに、大丈夫だと伝える。

みんなが安心出来る笑顔かどうかは、分かんないけど。

そんなことを思いながら、チラリと鏡を覗くと

───ごめん、急に痛みがきた───

そうやって苦しそうに微笑む、ジブンが映った。