63.青の記憶 ページ18
真っ青な空の下。
僅かに香る潮の匂いと、耳に届く楽しそうな声。
あぁ、本当に嫌だな。
と、パラソルの影に身を追いやる。
「なんで、Aって海、嫌いなんだ?」
『……昔、来たことあるの。お父さんと一緒に』
これは、焦凍は知らない。
私の個性が発現して数ヶ月後の話だ。丁度、焦凍は母と何処かへ行っていて、父が休みの日だった。
そんな日に、私は海に連れて来させられたのだ。
『私の個性が、半水だからさ…海の水を操る訓練をしたかったみたい。…でも、それが失敗に終わって溺れちゃって。それから、海は嫌い』
今では、海の水も操れるようになれただろうか。
試したくないからよく分からない。
「…悪い、俺が気づいてやれてれば」
『ううん。焦凍が悪いわけじゃない。私が未熟だったってだけだよ』
そう、ただそれだけ。
才能のない私が普通である私が。
悪かっただけだ。
「……アイツさえいなければ」
そう呟いた焦凍は、怒りでシワを寄せていてぶさいくだ。
そんな顔の頰を掴んで横に引っ張った。
焦凍は驚いた様子だったけど、そんなの御構い無し。
『焦凍、ぶさいく。私、焦凍の怒ってる顔、嫌いだよ』
「……そうか」
『うん。いいんだよ、昔のことだから怒らなくても。今更、なんとも思ってない』
父が過激だったのは、いつものことだったし。
と続けながらも焦凍の頰から手を離して立ち上がった。
本当に今更だ。今更、そんなことで怒ってたら身が持たない。
それに、焦凍は怒らなくていい。父に喧嘩を売らなくてもいい。それは、私の仕事だから………。
『冷たい物、食べたいね』
そう言って、笑った。
話をして小一時間ほど。コウ達が浜に上がってくるのが見えるからそろそろ頃合いだろう。
「?そうか?」
『だって、暑い』
「蕎麦とか冷たいぞ」
『普通はかき氷とかでしょ』
「そんなもんか?」
『うん』
じゃあ、買いに行くかと焦凍も立ち上がったところで、コウ達が帰ってきて荷物の見張りを頼む。
そのついでにおつかいも頼まれたけど。
「かき氷か……久しぶりだな」
『そうだっけ?』
「夏は蕎麦があれば十分だろ」
『それは、焦凍だけだよ』
そんな会話をしながら歩く砂浜は、少しだけ楽しくて。
海に来てよかったな、なんて思えてしまう。
本当に、都合のいいやつだと自分でも思う。
けど。
焦凍、私ね。
今なら、海に入れる気もするんだ。
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おつきみ(プロフ) - moeさん» ありがとうございます!!そう言ってもらえるととても嬉しいです!!これからもよろしくお願いしますm(__)m (2018年4月21日 17時) (レス) id: 927d00d57e (このIDを非表示/違反報告)
moe(プロフ) - この作品、大好きです、 (2018年4月21日 11時) (レス) id: 32c275f53e (このIDを非表示/違反報告)
、 - 実在する人物、団体、アニメキャラ等を扱う二次創作になりますのでオリジナルフラグ外して下さい。違反行為で違反報告の対象になります (2018年3月26日 6時) (レス) id: 104648a3e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おつきみ | 作成日時:2018年3月26日 1時