事件21件目 ページ22
神谷さんが私の腕を掴みながら泣いているのがわかった
好きと言われるのはとても嬉しかったけど
「ごめんなさい。さっきの方は誰ですか」
二股なんて耐えられない
刑事という立場上そう言う事をしないとは思うが
やはりさっきの出来事は気がかりだった
神谷「元カノです。ヨリを戻そうと言われましたが丁重に断っておきました」
とても綺麗な人だった
神谷さんとさっきの人が並んで笑っているのを考えると
自分が隣に立っているのが恥ずかしく思えた
ああ自分すごいネガティブだな
なんて自分を嘲笑って
こんな自分じゃ
神谷さんなんか程遠い
神谷「Aさんは、俺のことどう思ってるんですか」
「...私なんかじゃ、神谷さんとは」
神谷「俺は!」
そういつもは大声を出さない神谷さんが
大声を出した
私は後ろにいる神谷さんに顔を向けると
神谷さんは少し間を開けて私をみて言った
神谷「Aさんの本当の気持ちが知りたいです。俺のことは....遊びだったんですか」
少し目を赤くして眉尻を下げて困ったように寂しげに笑う神谷さんの表情が
これまでに無いくらい私の胸を締め付けた
遊び?
冗談じゃない
私はちゃんと本気だった
ちゃんと貴方に釣り合うよう本気だった
「遊びな訳、無いです。でも神谷さんの隣は、私じゃあ」
私が神谷さんに目を背けた時に
私は神谷さんの腕に引っ張られて神谷さんの腕の中にいた
とても暖かくて優しくて神谷さんの香りがして
引いていた涙がもっと溢れそうになった
私の努力は
ここでお仕舞いなのかもしれない
神谷「隣にふさわしい女性は俺が決めます。俺の隣にいて欲しい女性も、それは、この先きっと貴方だけです」
神谷「これでもダメなんですか」
震える手にギュッと力が入るのがわかった
私は神谷さんのほんの一部しか見てなかったのかもしれない
こんな弱々しい一面を私はみたことがない
そう考えると
私はもっと貴方のことが知りたくなった
「ごめんなさい」
神谷「そう、ですか」
彼はきっと勘違いしてる
そのごめんなさいは違うごめんなさい
すっと私から神谷さんが離れる
やだ
離さないで
「私、神谷さんのこと諦めきれそうにない」
神谷「!」
私が振り向くと
神谷さんはすぐさま正面から抱きしめてくる
鼻先に感じる香りがさっきよりも強くて
ああやっぱり
私はこの人を嫌いになれないんだなんて考え
ギュッと背中に回した手に力を入れて
星が煌めく夜空に溶けるように
私たちは長い間強く抱きしめ合った
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