. ページ18
.
棺の中、静かに眠る彼。
でも、確かに無傷だわ、なんて、不謹慎に思った。
二度と、目覚めてくれないけれど。
私たちは恋人同士じゃなかったし、セドリックが私に構った理由なんて知ったことでは無い。
事実、セドリックはダンスパーティーにチョウ・チャンと出席した。壁の花になっていた私に話しかけてくれたけれど。
どうして、もう笑いかけてくれないの？
優しい声で、A、と呼んで。
お願い、セドリック。
「失礼ながらお嬢さん、あなたはセドリックの、？」
随分と長い間、時々嗚咽を漏らしながらセドリックを独占してしまったからだろう。
不審に思われたようで、声をかけられた。
彼の、父親だ。
「……勉強、仲間です。優秀な息子さんに教えてもらったり、私の得意分野を教えたり、その、特別な仲ではないのですが、」
しどろもどろになりながら答える。
セドリックが褒めてくれた瞳は、未だ前髪に隠したまま。
「あぁ、君が、A・Aか！
息子が帰ってくる度に、君の名前を出していた。随分と仲が良かった、…いや、あの子は好いていたに違いない」
「……好いていたなんて、セドリックはそんな、」
「いや、好いていたんでしょう！
でなければ、貴女はそんなにお泣きにならないでしょう？」
息子に対する絶対的な自信、両親にもやはり相当愛されていたのだと感じる。
自分の息子が好きな人に対して、忠実に愛を捧げ、その愛を真摯に受け止めているから、私は泣いているのだと、彼はそう言いたいのだ。
あァ、そうですとも、仰る通りですわ。
セドリックに抱えきれない愛を貰った。
それが、恋愛的なものなのか、友情だったのか、そんなことはもう分からない。
______「大丈夫、君は世界一素敵な女の子だよ」
幾度聞いたか分からない、その言葉。
あまりにもストレートなその瞳が、脳裏にずっと焼き付いて離れない。
独りで、泣きたくなる時、必ず彼は言うのだ。
彼は私の理解者で、私もまた、人気者ではない本当の彼の理解者だったのかもしれない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フォイの許嫁(プロフ) - どのお話も切な過ぎて泣きそうです.....😭 (4月21日 14時) (
レス) @page22 id: 8a6381d4ef (このIDを非表示/違反報告)
霞(プロフ) - スピカブラックさん» 記載出来ていたつもりが、出来ていなかったようですみません。リクエストにお応えするつもりは今のところありません。遅筆ですし、不定期に気分で書いているので催促はやめていただけると嬉しいです。私の注意不足ですみません💦 (2022年11月14日 13時) (レス) id: 15ecf1a3d4 (このIDを非表示/違反報告)
スピカブラック - 霞さん» まだですか？ (2022年10月3日 8時) (レス) id: 7ca7b99cb8 (このIDを非表示/違反報告)
スピカブラック - リクエストでスネイプ先生書いて欲しいです！ (2022年9月21日 14時) (レス) id: 7ca7b99cb8 (このIDを非表示/違反報告)
岡Ｐ(プロフ) - どのお話も素敵で感動しました。これからも素敵なお話楽しみにしています。 (2022年9月21日 3時) (レス) id: e3d27a2b53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霞 | 作成日時：2021年1月17日 23時
