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三十九夜 ページ41

「あら、いらっしゃい。今日はこっちからなのね」



  「よ、A。久しぶりだな」



 春風香る昼下がり。

 最近は玄関から来るようになった彼が、手摺へと舞い降りた。

 開けたままにしていたバルコニーから、かつんと音がする。


  「たまには良いだろ?こっちから来んのも」


  「前は玄関から来る方が珍しかったのにね、ふふ」


 先々月前なら、こうして窓から来ることしかなかったのに。
私たちの関係が変わったことを実感する。


  「どこかへ出掛けていたの?私服なんて珍しい」


 最近は学生服で来ることが多かったから、私服は久しぶり。
 見たのは2回目くらいかしら。


  「休日だからなー。近所付き合いってもんがあってよ、うちの母さんと幼馴染とその父さんと」


  「あぁ、あの、青子さんと、中森警部さん?」


 幼馴染、良いわね、


 私の幼馴染は嫌なやつだったから。余計羨ましい。


  「...A?」


 快斗が心配して、私の顔を覗き込む。


  「んーん、なんでもないわ」


 かぶりを振って笑う。快斗に心配はかけたくない。


 本当は羨ましい。

快斗と出かけられることが。
快斗と幼馴染であることが。
快斗と同じ学校に通っていることが。


  「ほんとか?...それなら良いけどよ」



  「うん、本当よ」



 気付けば私の目の前まで来ていた快斗が、ぽんと私の頭に手を乗せる。


  「じゃあ、この後、予定あるか?せっかくだし、街に遊びに行こうぜ」



  「え、?」


 
  「嫌か?」



  「...嫌なわけないじゃない!行く!行きましょ!」


 快斗ってば、人の心が読めるのかしら。やあね、恥ずかしいじゃないの...


  「ははっ、急に元気だな」


 
  「だって、嬉しいもの!快斗と出掛けるの」



 分かってくれるのがこんなに嬉しいなんて、


  「ほら、早く行きましょ!」


 快斗の手を引いて、走り出す。


 

  また、私と快斗を試すように、様々なことが降りかかってくる。


 私と快斗の仲を深めるだけなのに、ね。


 

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蘇澳(プロフ) - 絲さん» 飛んできてくださってありがとうございます!よろしければまた読んでやってくださいませ〜 (4月25日 23時) (レス) id: 92b4cb2eaf (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新通知を受け、すっ飛んできました…本当に大好きな作品なので、続編とっても嬉しいです( ; ; )楽しみにしてます♪ (4月25日 0時) (レス) @page43 id: 86d7744b06 (このIDを非表示/違反報告)
シアん。 - 軽く23回咳き込んだに見えてしまった (8月19日 8時) (レス) @page8 id: 2170ff9ae1 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - この小説私得だ…めっちゃ好きー。言葉に表せないくらい好きです!これからもがんばってください! (2019年11月3日 22時) (レス) id: 1eb05cfcac (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - チイナさん» 私の拙い文章にそこまで言ってくださって本当にありがとうございます…!チイナさんのお言葉に感動して涙が出ました…そこまで私の作品を楽しんで下さりありがとうございました!感謝でいっぱいです! (2019年7月24日 19時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:蘇澳 | 作成日時:2019年4月15日 7時

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