お見合い相手が泣き虫な金髪君だった

お見合い１９ ページ19

冨岡さんが鬼の糸を切るのが見える。


間一髪で、隊員を助けられたようだ。



私も仕留められる良い位置を見つけ、そこで息を殺して待つ。





鬼「次から次に……！僕の邪魔をするな！」





鬼が血鬼術を使う。


瞳に数字……十二鬼月だ。



冨岡さんが呼吸を整える。


そして、十二鬼月の渾身の一撃を諸共せず斬った。





冨岡「雨仁」





私は名前を呼ばれ、息を吸った。



＿＿＿＿涙の呼吸、陸ノ型、『泣き笑い』




首が宙を舞う。


……子供の鬼だ。小さな子供の。





『俺は、俺は……父と母が恋しかった』




A「……」





走馬灯のようなものが私の頭を駆け巡る。



その瞳には、隊員ととある少女が映っていた。

あれは……兄妹だ。




首を無くした鬼の体がふらふらと歩き出す。


そして、その兄妹の前でぐしゃりと倒れた。




その子の頭の中には、両親が映し出されていた。


これが、この子の記憶。



……なんて悲しくて、残酷なんだろう。

この子は……ただ、ただ謝りたかっただけなんだ。



私は、そっとその子の頭を撫でる。


彼の瞳に私が映った。





？「なんで……」




A「……悲しかったね」





私は小さくそう囁く。



すると、鬼の瞳から涙が零れ落ちた。


鬼は、羨ましそうに兄妹を見る。




その時、隊員の少年の手が、鬼の背中を撫でた。





A「！」





私はそれに目を見開く。



あの子は……命を狙われた鬼に慈悲をかけるのか。




その時に気がついた。





A「……真っ白な心だ」





少年の心は、真っ白だった。


儚いくらいに、純粋で。





鬼「優しい手……」





鬼は、小さくそう言った。

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