緋色の契り(弐)【呪術廻戦】

五十二 ページ7

Aside




突如現れた五条悟は私を止めるわけでもなく、ただ私と当主の男を見ていた。





当主「五、五条様！！お助けください！！我々は今まで五条家に尽くして参りました！」





吐き気がする。



なんでこんな男とほんの少しとはいえ血が繋がっているんだろうか。





五条「そうだね〜。頼んでもないことだったけど」





五条悟は何を思ったのか印を結ぶ私の手を、自身の手で包んだ。





五条「…ここは抑えろ。あいつを殺しても君の母親が戻ってくるわけじゃない」





耳元で囁かれたその声はいつもよりずっと優しくて。





『でも…！！』




五条「いいから」





印を解いた私を見て、当主は勝ち誇ったように笑った。





当主「五条様…！この礼は必ず…！！」




五条「礼とかいいから、まずはその口を閉じろよ。お前の声は耳障りだ」




『…！！』




当主「…はい？」





私の手を握っていた五条悟は今まで浮かべていた笑みを消し、腰が抜けて動けない当主の前に移動して見下す。





五条「話、聞かせてもらってたんだけどさ。お前、相当のクズだな。思わず笑っちゃいそうだったよ」





なんで権力のある人間はクズしかいないのかなぁと五条悟は付け足して。





五条「………そういえば蒼社の人間は僕の為なら死ねるんだっけ？」




当主「五条…様？？」





今の五条悟から感じるのは怒気と殺気。



彼が蒼社の人間を幾ら嫌いでも、ここまで機嫌を損ねる要因になるとは思わなかった。





五条「…術式反転＿＿赫」





当主が派手に吹き飛ぶ。




五条「加減はしたけど暫くは碌に動けないんじゃないかな。…そもそも人を殺してる時点でお前は呪詛師だ。生かす必要もないんだけど…って…あーごめんね。もう聞こえてないか」





壁に減り込み、意識を失った当主を鼻で笑って五条悟は私の元に戻って来る。





五条「帰るよ」




『………』




五条「恵が心配してる。…それに事情があったとはいえ、蒼社の非術師を傷付けた。高専に戻らないことにはどうにもならないだろ」





動こうとしない私の手を五条悟は引いた。



こんな状況にも関わらず、昔のことを思い出してしまって。





『あの日に戻りたい…』





きっと私の声は五条悟に聞こえていた。




それでも彼は何も言わなかった。

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