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『夏油君、私帰る』
そう言って席を立った私の腕を掴んだ夏油君。
『え…ちょっと?』
夏油「ん?」
さっきまでの寂しそうな笑顔は何処へやら、今の夏油君は誰が見ても満点をあげたくなるような笑みを浮かべていた。
夏油「人の家でタダ飯食っといて帰るつもり?私はそこまで優しくないんだけど」
『…え?殺されます?私』
夏油「まさか。ただ今日は泊まっていって欲しい。…何もしないから。明日になったらAのことはちゃんと諦める。だから今日くらいは夢を見させてくれてもいいんじゃないか?タダ飯食いさん」
『……分かった』
本当は断るべきなんだろうけど、夏油君の言う通り只で夜ご飯を食べさせてもらったんだし(リクエストも聞いてくれたし)、何より無理して笑っているような心友の願いを聞かないほど私は冷たくない。
夏油「ありがとう」
『そんな無理して笑わなくてもいいんだよー?なんなら胸貸してあげるから泣きますかー?』
なんて言って揶揄う私は最低だろうけど、元より夏油君と私はこういう関係。
夏油「じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
『え』
私が発せたのはそれだけ。
一瞬のうちに私は夏油君に抱き締められていた。
『何もしないって言ったばかりでは?』
夏油「…私からはね。胸貸してあげるとか言ったのはAだろ」
『冗談だったのに』
夏油「受け取り手が冗談だと思えば冗談になるけど、生憎私には冗談に聞こえなかったよ」
私を抱き締める夏油君の表情は窺えない。
でもいつもの彼に比べると声に元気がなかったというかなんというか。
『ねぇ』
夏油「ん」
『いつ私のことを好きになったのかとか聞いていい?』
夏油「ダメ」
『あーあ。言葉のキャッチボール終わっちゃった〜。…私の気不味さ分かってらっしゃる?』
折角間を保たせようと話題を振ったのに。
夏油「……悟が蓬とそういう関係になっていたとしてもAは悟を選ぶのか?」
私を抱き締めたまま夏油君が呟く。
『もし蓬が五条君と付き合うことになったら奪い返してやりますよ。ぶりっ子は最強だから』
夏油「だから悟や私に対しては最弱だっていつも言ってるだろ。馬鹿だな」
『夏油君』
夏油「次はなんだい?」
『気持ちは凄く嬉しかった。ありがとう』
夏油「そういうことを言われると諦めたくなくなるんだけどな。…まぁそんなところも好きだったよ」
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chiaki0708(プロフ) - テンポよく最後まで楽しく読みきれました!!また作者さんの違う作品も見に行きます! (2022年1月9日 9時) (レス) @page39 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
七不思議零番たんでち - 作者さん!!!!これは御願いなのでやらなくてもいいんですが… 後日談(仲良し一年ズも出てくる)つくってほしいです!!!! 素晴らしい作品をありがとうございました!!!! (2021年4月3日 3時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柿助 - 完結おめでとうございます!作者様が書く夏油の切なげな恋が大好きでした!お疲れ様でした! (2021年3月31日 7時) (レス) id: fedb05499d (このIDを非表示/違反報告)
るーり - 完結おめでとうございます!なんだか、とても楽しめるお話でした!!作者様、最高!!! (2021年3月22日 14時) (レス) id: 7ac2a7ec47 (このIDを非表示/違反報告)
宮夢(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした!次回作も楽しみにしています! (2021年3月21日 15時) (レス) id: 84aaee8034 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹葉 | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/fall_0613
作成日時:2021年2月24日 18時