６４◆見知らぬ名 ページ4
Aはベッドに横になったまま、
少し不安そうに俺を見つめている。
「ごめんね…大きな声を出して」
とりあえず英語でそう謝ってみると、
「気にしないで」
彼女は簡潔にそう答えた。
記憶がない状態になっていても、
そういうところは変わらないものなんだろうか。
「ちょっと借りるね」
部屋の隅にあった小さな椅子をベッド脇に置き、
ゆっくり腰を下ろす俺をAはじっと目で追っていた。
「…ケガの具合はどう？」
「だいぶいいわ。ありがとう」
「よかった。
えっと…俺は、ショウ。
日本から来たんだ」
そう言うと、
Aの顔がパッと輝いた。
「やっぱり！
さっき聞いていて日本語かなって」
「…」
「懐かしいわ…
私、育ったのはカナダだけど生まれは日本なの。
昔住んでいたこともあって」
胸がぐっと苦しくなる。
昔じゃねぇよ。
ついこの間だって―――
そう言ってやりたいのをぐっとこらえ小さく聞いた。
「あの…ランダって？」
それはさっきから気になっていたことだった。
俺らが部屋に入った時、
確かあの男が『ランダ、客だ』と…
「ああ、私の名前よ。
ムハンマドがつけてくれたの」
こともなげにAが答えた。
(ムハンマド…)
さっきの男はそういう名前らしい。
エジプトで一番多い名前だと本で読んだっけ。
そして長男につけることが多い名前だとも。
(てことは…)
ムハンマドが長男で、
ハサンとノーラは年の離れた弟妹なのかもしれない。
「今ちょっと自分の名前が思い出せなくて…
でもここにいる間、名前がないままじゃ不便だからって」
今の季節に咲きほこっている、
いい薫りのする白い花の名前なのだという。
そういえばここに来るまでにもあちこちで見たな。
「…そうなんだ。
綺麗な名前だね」
「ありがとう」
Aが嬉しそうに微笑む。
その笑顔が胸に突き刺さるようだった。
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薫子(プロフ) - ゆきままさん» ２に続き３にもコメントいただきありがとうございます(^^) スノードームはずっと活躍させたかったアイテムなのでやっと使えて私も嬉しいです。最終章を先ほどアップしましたのでまたお楽しみいただけたら幸いです！良かったらまたご感想などお寄せ下さいませ(^^) (2020年1月12日 9時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきまま - はじめまして、いつも楽しみにしております。スノードーム！ベストアイテムですね、さすがです。路地裏も最強ですね。次回も楽しみにしております。 (2020年1月12日 4時) (レス) id: 6749c8d29b (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - さやさん» こんばんは(^^) そうなんです☆翔ちゃんのコレクションを見たのが18話、その後46話で証言が出ていた『買いたいものもあるし』の対象もスノードームでした。やっとこさ伏線回収できてホッとしてます(笑) 続きもよろしくお願いします！ (2020年1月11日 20時) (レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 薫子様！もうすぐｺｺも佳境ですね。記憶のｷｰﾊﾟｰｿﾝがｽﾉｰﾄﾞｰﾑってのに流石だなぁと感心です!!!!!さて物語流れますね。続きも楽しみです！変なﾀｲﾐﾝｸﾞでｺﾒ入れちゃいました(^^; (2020年1月11日 16時) (レス) id: 4ca326b9cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2019年12月6日 8時
