７７◇窓辺の日常 ページ17
ここに来てどれぐらいになるのだろうと、
窓辺で風に吹かれながらぼんやり考えていた。
(そういえば…)
吹く風にもう花の香りはしなくなっている。
ランダの花の季節はとっくに終わってしまった。
砂嵐や暑い季節ももう過ぎて、
最近は朝晩とても涼しくて気持ちがいい。
「いい天気…」
ベッドから起き上がれるようになったのはだいぶ前だ。
傷はすっかり治り、包帯も取れている。
今日はムハンマドに車を出してもらい、
町はずれの医者に連れて行ってもらった。
『記憶はどうかね』
『んーまだ全部は…』
『そうかい。まぁ何かきっかけがあれば一気に思い出すかもしれんしの』
普通に歩く分には問題ないが、
一応まだ走ったりはしないようにと注意された。
「寝てなくていいの？」
ハッと振り向くと、
ハサンとノーラがドアから覗いていた。
「ええ。もう大丈夫」
「じゃあ外で遊ぶ？」
「いいえ、それはちょっと無理ね」
思わず笑うと、
ちぇ、とそっくりな表情でつまらなさそうにしている。
ムハンマドは家の前で私を車から降ろした後、
そのまま街まで買い物に出かけたようだった。
「入っていーい？」
「どうぞ」
２人はムハンマドほど英語が話せない。
私はアラビア語がそんなにできないからお互い様だけど、
互いにがんばれば大体の会話ができるのが楽しかった。
ノーラ達もそれは同じらしく、
客人の部屋には行かないよう言われているのに、
ムハンマドの目を盗んではこうして部屋に遊びに来るのだった。
「なに考えてたの？」
「んー？ そうね…」
答えながら何となく外の風景を眺める。
砂地の茶色と草木の緑が強い日差しにまぶしい。
乾いた風が、肩に届きそうなくらい伸びた髪を撫でていく。
「私分かる」
「僕もだよ」
「え？」
何を言い出すのかと２人を見ると、
「ショウのことでしょ」
ぴったり同じ声でそう言われ、
思いがけず動揺した。
(あれはいつだっけ…)
もう半年ほど前になるだろうか、
１度だけ訪ねてきたあの日本人。
今さらあの彼のことを言いだすなんて…
「え？ なぜ？」
「だってずっと悲しそうだよ」
「悲しそう？ 私が？」
ハサンに聞き返すと、
横でノーラがうんうんと頷いている。
その様子に苦笑いしながら、
「別に悲しくはないけど…」
遠くにそびえる木を見つめて呟いた。
「でも…そうね。
ずっと気にはなってるわね」
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薫子(プロフ) - ゆきままさん» ２に続き３にもコメントいただきありがとうございます(^^) スノードームはずっと活躍させたかったアイテムなのでやっと使えて私も嬉しいです。最終章を先ほどアップしましたのでまたお楽しみいただけたら幸いです！良かったらまたご感想などお寄せ下さいませ(^^) (2020年1月12日 9時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきまま - はじめまして、いつも楽しみにしております。スノードーム！ベストアイテムですね、さすがです。路地裏も最強ですね。次回も楽しみにしております。 (2020年1月12日 4時) (レス) id: 6749c8d29b (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - さやさん» こんばんは(^^) そうなんです☆翔ちゃんのコレクションを見たのが18話、その後46話で証言が出ていた『買いたいものもあるし』の対象もスノードームでした。やっとこさ伏線回収できてホッとしてます(笑) 続きもよろしくお願いします！ (2020年1月11日 20時) (レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 薫子様！もうすぐｺｺも佳境ですね。記憶のｷｰﾊﾟｰｿﾝがｽﾉｰﾄﾞｰﾑってのに流石だなぁと感心です!!!!!さて物語流れますね。続きも楽しみです！変なﾀｲﾐﾝｸﾞでｺﾒ入れちゃいました(^^; (2020年1月11日 16時) (レス) id: 4ca326b9cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2019年12月6日 8時
