敬語系実況者【最終兵器俺達】

8.見える悲しみ、聞けない不安 ページ20

・ヒラ





今日はAと2人実況。ヤンデレが題材で、女と男に分かれる為、Aには女の子の方をやってもらった。





あまりというか絶対Aの口から出ない台詞ばかりで少し新鮮な気分を味わう。





「ヤンデレ感出てました？」



ﾋﾗ「うん、めっちゃ出てたよ」



「めっちゃヤンデレ声作りました(笑)」





普段、低めの声のAにとって、今日の実況は少し辛かったかもしれない。A自身の声は聞き取りやすくて、実況などを見ているとストーリー調のものには惹き込まれるし、普通にゲームしてても心地よいものだ。





ﾋﾗ「喉とか大丈夫？」



「全然大丈夫ですよ」



ﾋﾗ「良かった、取り敢えずゲームしよっか？」





2人でゲームをし始めて1時間。トイレから出てきた時に、Aがスマホをじっと見て少し悲しそうな顔をしていた様に見えた。けど、俺が来た事に気付いてすぐにスマホをしまい続きやりましょーなんて明るい声を掛けてくる。





そういえば、出会って間もない頃よくああいう目してたな。未だに誰にも見てない所で、悲しんだり苦しんだりしてるのかな。





ﾋﾗ「ねぇ、A……」


「んえっ、どうしました？」




笑顔でこっちを向くAに『辛い事ないの？』なんて、聞けるだけの勇気がなかった。




ﾋﾗ「んーんなんでもない、ほら画面見てないと」



「あっ、負けた！ ヒラさんズルいですよ(笑)」



ﾋﾗ「ズルはしてない(笑)」





・





Aの両親は亡くなっている。そう聞いたのは、Aと出会って半年後だった。出会った当時はあまり笑わない子っていう印象が強くて、なんでだろうって疑問に思っていたのが事実。





例えば周りはすんごい笑ってるのに、Aだけ笑ってるか笑ってないかわからない。けど話にはついてこれている。





中学生なのに妙に大人びていて、どこか遠くを見る瞳とか。





オーナーの奥さんの従妹、最初はそれだけしか知らなかったけれど、後にAの兄が自分達の先輩だと知った時に驚いた。





Aの両親が亡くなった理由は、その先輩つまりAの兄から聞いた事。Aが小学校低学年の時に、母親が亡くなって、それから数年後に父親も亡くなったという。




母親は事故で、父親は過労死。それからは親戚中にたらい回しにされ、行き着いた先は最終的に従姉夫婦の所。



Aは苦労人だってよく分かってる。その上俺達はAに支えられてるし、ホント感謝しかない。

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