2-1. 予測の範囲外 ページ8
第二話
プールの中からポカンと見上げてくる顔に、我に返った私は「あっ、えっと、と、とりあえず上がる?」ときょどり倒した。
廣瀬くんは意に介さず 片手でゴーグルとキャップを取って、そのままの手をプールサイドに付いて軽く飛び上がってくる。
「先輩、水泳部の人ですか?」
「うんそう。てか廣瀬くんはなんで……」
続く言葉は、何故だか口に出てくることは無かった。
踏み込み台から一段降りて、水を切るように頭をフルフルと横に振りながら少し下を向く。髪の毛から滴り落ちる水は身体を伝って全てが足元へ垂れて、小さな水溜まりを作った。
(雰囲気ある子だなぁ……)
日焼けを知らない白い身体は壮大程ではないにしろ、腹筋が綺麗に割れていて肩周りも意外とガッシリしている。長めの髪の毛が張り付く頬は形よく、横顔だけで(この子モテるんだろうなぁ)と思わせた。
言葉を詰まらせた私に視線を向けて、「ん?」と伺う仕草にハッとする。
「……えっと、何故にプールサイドにいるのかと思いまして」
「すみません。久々に泳ぎたくなっちゃって、勝手に鍵借りました」
ジャージの下からセームが出てくるあたり、紛れもなく競技経験者なんだろう。身体を拭きながらジャージのポケットを探って、黄色いタグのついた鍵を見せてくる。……日高先生、ありましたよ。
「よかった……」
「え?」
「ううん、ごめんこっちの話。
廣瀬くんはどこのクラブ通ってるの?」
「いや、通ってません」
「え゙っ?!」
うっそ、それであんなに速いの?
「あ、入部してもいいですよ」
「……んええっ?!なんで?!」
「ははっ、なんでって。俺が入部すると困るんですか?」
それまでのクールな印象が一転。私の反応に白い歯を見せて笑い出す廣瀬くん。あ、そんな顔もするのね、と不覚にもドキッとしてしまう。
しかしそれどころではない。
短水路とはいえ半フリ25秒台(体感)を軽く叩き出しておいて、クラブに通っていないとか。そんな摩訶不思議なひといる?居るんですねここに、おっそろしい。
かと思えば、何か水泳をやらない事情があるのかと勘繰る間も無く『入部していい』ときた。何だろう、今年の2年目ってみんな宇宙人なのかな。
「困る事ない。大歓迎だよ……!」
「よかった。入部届けってどこでもらえます?」
「えっとねそれは職員室で…………………あ、」
「ん?」
肝心な事を思い出して固まる私に、廣瀬くんは首を傾げる。やばいやばい。すごい子の入部に浮かれそうになっていたけど、彼の存在をすっかり忘れていた。
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祐莉 - お久しぶりです! 更新いつまでも待ってます。 (2022年10月21日 20時) (レス) id: 141db64209 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» ゆっくり更新になりますが、是非お付き合いください😌💓水とお友達のびふぁ君たちを書きたかった…! (2022年10月8日 2時) (レス) id: 8cbda2bab5 (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - 新しい小説〜!これから、楽しみですぅ( ꈍᴗꈍ)水泳部。。。想像しただけで、よだれが。。。(笑) (2022年10月7日 8時) (レス) id: 9b3b932bb4 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 祐莉さん» お久しぶりです。またまた私でなんだか申し訳ない(笑)ゆっくり更新していきますので、気長にお付き合いいただければ嬉しいです(^^) (2022年10月3日 4時) (レス) id: e5900b4b59 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - BESTY さん» はじめましてこんにちは!色々とお読みいただいているようでありがとうございます(^^)ゆっくり更新にはなりますが、楽しんでいただければ嬉しいです。 (2022年10月3日 4時) (レス) @page12 id: e5900b4b59 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2022年9月30日 22時