1-5 ページ6
.
*
「というわけで確認してもらっていいでしょうか」
「壮大がえらい張り切っているね」
「体力が有り余っているみたいです」
「はははっ!」
翌日の放課後。毎週水曜日は部活が休みの日で、委員会活動を終えた私は職員室に来ていた。2年の教師陣が集まる島で かっちり3ピースのスーツを着てコーヒーを飲みながら、ルーズリーフに目を通しているこの年齢不詳イケメンは、水泳部顧問の日高先生だ。
「舜斗のこの2コメはどうしたの?壮大に押し切られた?」
「いえ、そっちは舜斗が自分から出たいって」
「おお!そうなんだ。プログラム順的に本命への体力回復が気になるから、体力がつくメニューを頼むね」
「任せてください。明日からスパルタでいきます」
「ふむ。じゃあこれでエントリーしてもらっていいですよ」
ルーズリーフを返されながら「弟君は元気?」と決まり文句の質問を受ける。本当にこの教師は、私の弟が大好きだな。
「変わりなく元気です。最近はクラブで舜斗と仲良くやってるみたいで……家でも舜斗の話ばっかり」
「あははっ!いいねぇ、来年が楽しみだな。学校見学来るときは言ってね、僕が案内する」
「いいんですかその贔屓」
「いいのいいの。彼は絶対にうちが貰う」
ぱっちり二重の大きな目が細められる。私はよく分からないけどさ、この人に執着されている我が弟、この先だいぶ大変な思いをしそう。
あんまり姉弟間で進路の話をしてこなかったけど、早いうちに彼の意思は聞いといた方が良さそうだ。
コーヒーを飲み終えた日高先生は「さて」と言いながら椅子から立ち上がる。
「どこか行かれるんですか?」
「うん。プールに塩素入れに行くよ」
「あ、それなら私行きます」
「部活無いときくらい僕に任せて」
「忘れ物してこれから取りに行くつもりだったんです。鍵ももらってきたんですけど……もう一個先生が持ってます?」
ほら、とポケットに入れていた鍵のキーチェーンに指を通して掲げたら「おおっ」と目を見開く。朝から愛用のインクペンがペンケースに入っていなくて、おそらく昨日の部活時にどこかに忘れてしまったんだろうと思う。
明日を待っても良かったが、手元にないと落ち着かない。
「いや、僕は持ってないよ」
「あれ本当ですか…?じゃあ……壮大かなぁ…?」
「管理はしっかりね」
「すみません……聞いておきます」
「うん。じゃあ、塩素は頼んでもいいかな」
苦笑いを浮かべた日高先生の「よろしくね」という言葉を背に、いそいそと職員室を後にした。
正直鍵持ってる人に心当たりないけど どうしよ。
.
88人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
祐莉 - お久しぶりです! 更新いつまでも待ってます。 (2022年10月21日 20時) (レス) id: 141db64209 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - masayo_8さん» ゆっくり更新になりますが、是非お付き合いください😌💓水とお友達のびふぁ君たちを書きたかった…! (2022年10月8日 2時) (レス) id: 8cbda2bab5 (このIDを非表示/違反報告)
masayo_8(プロフ) - 新しい小説〜!これから、楽しみですぅ( ꈍᴗꈍ)水泳部。。。想像しただけで、よだれが。。。(笑) (2022年10月7日 8時) (レス) id: 9b3b932bb4 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 祐莉さん» お久しぶりです。またまた私でなんだか申し訳ない(笑)ゆっくり更新していきますので、気長にお付き合いいただければ嬉しいです(^^) (2022年10月3日 4時) (レス) id: e5900b4b59 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - BESTY さん» はじめましてこんにちは!色々とお読みいただいているようでありがとうございます(^^)ゆっくり更新にはなりますが、楽しんでいただければ嬉しいです。 (2022年10月3日 4時) (レス) @page12 id: e5900b4b59 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:白 | 作成日時:2022年9月30日 22時