エバ・グリーン

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ポス、と華奢な手のひらが頭に乗った。







感触からも分かる細い指先、けれど比べれば確実に自分よりも頼りがいがある。









「……泣かないよ」








「結婚すんだって」







「うわあぁぁぁあん、最低！なんでこのタイミングで言うの！」








「我慢するより泣いた方が良いわけよ」








「…ほんっと、ふっかってわかんない」







「ぜんぶ分かっちゃったらつまんないじゃん？だからさぁ、なんでも知ってる翔太より、分かんない俺の方が良くない？」








泣かない、泣きたくない。








どこまで本気かなんてやっぱり私は分からないけど、それでもちゃんとふっかの気持ちは分かってるつもりだ。








…ふっかの前でなんて、泣いたらダメだ。








「ふはははっ。あー、やっぱ俺、お前のそういうとこが好きだわ｣







自他ともに認めるその自慢の綺麗な手は、離れていけば寂しいと思うくらいには私も好きなのだと、ふっかの声を聞きながら思う。








「でも男はねぇ、それでも好きなコのそばにいたいと思うもんなの」








ふっかが私の強いところが好きだと言うのなら、私はまだ強いままでいてやろう。







そっと顔を上げればまた、底のない優しい瞳が私を映していた。








「…あたし、ふっかに甘えてる、」








「俺が嫌がったことなんてあったわけ？」








好きなコ、なんて言うのは私にだけであったらいい。







ついでにその瞳も優しさも、向けられるのは私だけであればいいのに。








「うん、だから、とことん甘えてやろうって今思った」








「開き直ったわけね」








「今から翔太のとこ行ってくる」









「今から？」








「だってあいつ、ムカつく。言いたい事言ってやんなきゃ、寝れたもんじゃない」







「まじで行くから」と言えば「別に止めねぇよ」と呆れた顔で笑う。









「で、俺は寝てもいーの」








「良いけど、鍵は空けといてよ」








「戻ってくるのね」







「言ったでしょ、とことん甘えてやるって」







はいはい、と軽くあしらいながらも本当は嬉しそうに頬が緩んでいる事、分かってるんだからね。







なんて、そんな事言ったら「分かんない俺の方が良くない？」ってもう言ってくれなくなりそうだから、言わないけど。











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