月花石色-366日短編小説‐

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staff「開演15分前です！ステージ裏に集まってください」



スタッフさんの声掛けに返事をしながら
それぞれが、やる気に満ち溢れた顔で楽屋を後にしようとする。


その時、ふと美恵がこちらに振り返った。


美恵「本当に、Aさんがリーダーでよかったです。」



そんな彼女の言葉に私は、その場に立止る。



彼女に続けと他のメンバーも


ミワ「ほんとそうですよね！いつもメンバーをまとめてくれるし」

レイ「常に励まして前を向かせてくれる」

ジュリ「ちゃんと、1人1人と向き合ってくれるしね。」


いつも、大人しいジュリまでも言うものだから
なんだか居心地が悪い。


『なに？みんな、本番前に煽てられても何もでないよー！！』


私の茶化しにみんなが笑う。



彼女たちの笑顔が私の頑張る力になる。
もちろん、ファンの皆さんの声援もだけど。




みんなで笑いあっていると、



紗良「Aさんって大人ですよね。緊張もすべてパワーに変えられるというか・・。」


ユメ「わかる！！Aさん、絶対緊張しないですもん！さすがです！！」




最年少組が、Aさん大好きー！！と叫びながら
今度は、みんな楽屋を出ていく。









私だけ。


その場に立止ったままだ。









　誰もいなくなった楽屋は急に温度を失う。









『…、バーカ。…緊張してるに決まってるでしょうが、一番緊張してるわ。』









誰もいない楽屋で呟いた声は


誰に聞かれるでもなく消えていく。








プレッシャーに押しつぶされ震える指先を隠すように手のひらで包み込んだ。









ギュッ。









“大丈夫”







　 “大丈夫”









信頼している仲間に、弱さを見せれない私は、





ただの臆病者なのだ。







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